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東京地方裁判所 昭和48年(特わ)357号 判決 1984年7月31日

被告人 協同飼料株式会社 ほか七人

主文

一  被告人協同飼料株式会社を罰金三〇万円に処する。

二  被告人栗崎達を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

三  被告人間邉隆一を懲役一年二月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

四  被告人船越力を懲役一〇月に処する。

この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。

五  被告人高田徹哉を懲役八月に処する。

この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。

六  被告人栗田司を懲役八月に処する。

この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。

七  被告人寺島一四六を懲役八月に処する。

この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。

八  被告人後藤光男を懲役八月に処する。

この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。

九  訴訟費用中、証人斉藤虎松に対し支給した分は被告人協同飼料株式会社、同栗崎達、同間邉隆一の連帯負担とし、証人遠藤順及び同潮田昭一に対し支給した分は被告人栗田司、同寺島一四六の連帯負担とし、その余の訴訟費用は被告人八名の連帯負担とする。

理由

(被告人らの経歴及び犯行に至る経緯等)

第一被告会社の沿革等

被告人協同飼料株式会社(以下「被告会社」という。)の前身は、昭和二八年四月一三日、当時京浜倉庫株式会社(設立・昭和二二年一二月、目的・倉庫、陸、海輸送等。以下株式会社を「京浜倉庫(株)」というように表示する。)の代表取締役であつた大津利が、同社の保管にかかる飼料原料を飼料に製造加工しこれを販売することを営業目的として設立した資本金五〇〇万円の協同飼料(株)(以下「旧協同飼料(株)」という。)であり、同社は右設立以来逐次増資を重ね、同三四年一〇月には資本金一二〇〇万円となり、同三六年東京証券業協会の承認を得て株式を東京店頭市場に公開したが、その際、それまで五〇〇円であつた一株の額面を五〇円に変更するための便法として、当時休眠中の協同飼料販売(株)(設立・昭和二一年九月、目的・飼料の販売等、資本金一九万八〇〇〇円)に旧協同飼料(株)を吸収合併させてできた会社が被告会社であつて、同三五年一一月一七日右の合併登記を了すると共に、存続会社の商号、資本金、営業目的を解散会社と同一のものに変更し、額面五〇円の発行済株式総数を二四〇万株とした。その後被告会社は資本金及び発行済株式総数を増加させ、同三六年四月に倍額増資(増資後の資本金二億四〇〇〇万円、株式総数四八〇万株)、同三七年八月に公募増資付倍額増資(同資本金五億円、株式総数公募分四〇万株を含め一〇〇〇万株)、同三八年一〇月に半額増資(同資本金七億五〇〇〇万円、株式総数一五〇〇万株)、同四一年一二月に倍額増資(同資本金一五億円、株式総数三〇〇〇万株)、同四五年一一月に公募増資付半額増資(資本金二三億円、株式総数公募分一〇〇万株を含め四六〇〇万株)を実施し、更に同四七年一二月には後記のとおり資本金三五億、株式総数七〇〇〇万株と増加させたものである(以下、昭和四七年一二月の右増資を「本件増資」という。)。なお、被告会社は、昭和三六年一〇月東京証券取引所第二部市場が創設された際、株式をこれに上場し、同四二年八月には同第一部市場に上場して今日に至つている。

ところで被告会社では、昭和三六年の前記東京店頭市場における株式の公開に際し、幹事証券会社を日興証券(株)(以下「日興」という。)とし、以後日興横浜支店において、増資手続、公募株の引受、株式の公開・上場の手続等を行つていたが、同四六年三月新たに大和証券(株)(以下「大和」という。)が副幹事証券会社として加わり、以後大和横浜支店が右日興横浜支店とともに被告会社の発行する公募株等の引受にあたることとなつたものである。

被告会社の代表取締役は、旧協同飼料(株)当時から吸収合併を経て現在に至るまで大津利であり(ただし、右合併後大津正二、吉田駒三等が右大津利とともに代表取締役に就任している。)、また本店所在地は前記合併の当初は東京都中央区銀座三丁目三番地にあつたが、昭和三七年五月神奈川県横浜市中区南仲通四丁目四三番地に、同三八年八月同市神奈川区千若町三丁目一番地に、同四九年二月同市中区日本大通一八番地にそれぞれ移転している。なお昭和四七年の本件当時、被告会社は本店在地のほか、名古屋、神戸、門司、室蘭に工場を有し、従業員数は七五九名(同年六月三〇日現在)であり、養鶏用、養豚用、乳牛用、水産用の各飼料及びペツトフード等を生産し、代理店、特約店、農業協同組合等にこれを卸販売していたものであつて、同年三月期の売上高は二七二億六〇〇〇万円余にも上つていたが、経常利益が六億一〇〇〇万円弱で、他方支払利息及び手形割引料が合計九億二〇〇〇万円弱もあり、右は借入金の総額が一〇八億六〇〇〇万円余に及んでいたことによるものである。

第二被告人らの経歴

一  被告人栗崎達

被告人栗崎は、昭和一五年三月東京帝国大学法学部を卒業して同年四月から(株)日本興業銀行に勤務し、同三六年五月同行本店審査部参事役を最後に同行を退職し、その後日東紡績(株)取締役を経て、同四一年一月被告会社に入社し、同年五月に常務取締役、同四三年五月に代表取締役副社長に就任し、本件当時主に被告会社の経理事務等を統括掌理していたものであるが、本件起訴後取締役相談役となり現在に至つている。

二  被告人間邉隆一

被告人間邉は、昭和二四年三月旧制横浜経済専門学校を卒業し、前記京浜倉庫(株)に勤務していたが、同二八年四月同社の大津利社長が旧協同飼料(株)を設立したのを機に同社に移り、旧協同飼料(株)及び被告会社を通じ一貫して経理部門を担当し、昭和三六年経理課長、同四二年八月経理部長となり、更に同四六年五月には取締役経理部長となつて、本件当時被告会社の経理事務全般を掌理していたものであるが、本件後の同四八年三月経理部長の委嘱を解かれて生産管理部長となり、同五〇年常務取締役を経て同五八年六月代表取締役に就任し現在に至つている。

三  被告人船越力

被告人船越力は、昭和二九年三月同志社大学経済学部を卒業して日興に入社し、同社大阪支店及び大阪駅前支店の勤務を経て、同三七年一月本社事業法人部長代理、同四六年三月横浜支店長となり、本件当時日興横浜支店の行う有価証券の売買及びその媒介、取次等の業務を統括掌理していたものであるが、本件後の同四八年三月本社営業企画部付に配転され、同五〇年三月以降本社営業資料部長の職にある。

四  被告人高田徹哉

被告人高田は、昭和三六年三月同志社大学法学部を卒業して日興に入社し、本社債券部売買課、鹿児島支店、本社第二金融法人部勤務を経て、同四三年八月横浜支店長代理となり、本件当時日興横浜支店長の被告人船越を補佐し株式等の売買注文の受託及びその執行委託等の事務を担当していたものであるが、本件後の同四八年三月本社営業企画部付に配転され、同四九年九月以降本社債券部に勤務している。

五  被告人栗田司

被告人栗田は、昭和二九年三月同志社大学経済学部を卒業して大和に入社し、本店営業部、新潟支店勤務を経て、同三七年一〇月本社営業部第三課長、同四二年三月同営業部次長、同四五年渋谷支店長、同四六年八月横浜支店長となり、本件当時大和横浜支店の行う有価証券の売買及びその媒介、取次等の業務を統括掌理していたものである(もつとも、同被告人は右横浜支店長就任直後に入院し手術を受けたため、実際に同支店に赴任して右の業務に携わつたのは、同年一一月以降のことである。)が、本件後の同四八年三月東京ブロツク付部長に配転され、その後同五三年一二月同社取締役、同五四年常務取締役、同五八年一二月専務取締役に就任し今日に至つている。

六  被告人寺島一四六

被告人寺島は、昭和二八年三月慶応義塾大学経済学部を卒業して大和に入社し、本店第二金融法人部、長野営業所、松本支店、千葉支店、本店第二金融法人部の勤務を経て、同四三年八月、横浜支店法人担当課長となり(同四五年四月から同支店次長を兼任)、本件当時大和横浜支店長の被告人栗田を補佐し株式等の売買注文の受託及びその執行委託等の事務を担当していたものであるが、本件後の同四八年三月東京ブロツク付次長に配転され、その後同年七月大和を退職して同社の非常勤嘱託となり今日に至つている。

七  被告人後藤光男

被告人後藤は、昭和三三年三月横浜市立大学商学部を卒業して野村証券(株)(以下「野村」という。)に入社し、名古屋駅前支店、大阪支店勤務を経て、同四四年一月新宿支店営業課長、同四六年一二月原町田支店長となり、本件当時野村原町田支店の行う有価証券の売買及びその媒介、取次等の業務を統括掌理していたものであるが、本件後の同四八年三月本社秘書室文書課付に配転され、その後、同五五年七月本社営業企画部長に就任し現在に至つている。

第三本件各犯行に至る経緯等

(一)  被告会社は、前記のとおり、旧協同飼料(株)以来逐次増資を行い、売上高も増加していたが、売上に伴う運転資金、設備増強資金の必要から、取引銀行等からの長期及び短期の借入金が累積し、昭和四七年三月期末における借入金総額は一〇八億円を超え、同期間の支払利息及び手形割引料の総額が九億一八九五万円余にも達した。このように被告会社は、日本配合飼料(株)、日本畜産工業(株)等の同業他社と比較して自己資本率が低く、逆に負債率ひいては金利負担率が極めて高く、これが経常利益を圧迫する主な原因となつていたが、そのほかに同四五年三、四月ころのいわゆる金融引締めの時期に取引銀行から借入金のうち約七億七〇〇〇万円の返済を要求されて資金繰りに苦慮したことも加わつて、社内においてはかねてから銀行借入に依存する経営体質を改善することや、純資産を増加する等して財務内容を強加することが重要な課題とされ、同四六年の決算役員会においては、被告人間邉から、社債の発行か増資によつて資金の調達を図ることを検討すべきであるとの提案がなされた。そして右のように自己資本率が低いこと等に加え、今後被告会社の業績を伸ばして行くためには、畜産物の流通機構の製備及び輸入加工の振興に向けて、相当多額の先行投資を行つていく必要があると考えられていたところ、昭和四七年年初以来金融が緩和されてきたこともあつて、被告人栗崎及び同間邉は、右の懸案を解決するため、早急に三〇億円程度の資金調達を図ることとし、被告人間邉においてその具体的方策を検討することとなつた。

(二)  被告人間邉は、同年五月中旬ころ、たまたま地元の相模鉄道(株)が時価転換社債を発行することを知つたことから、被告会社でもこれを発行すれば前記金額の資金調達が可能となり、転換価格を高くできれば、多額のプレミアムにより自己資本比率の改善にもつながり併せて銀行借入に依存してきた財務体質の改善にもなると判断し、そのころ日興横浜支店の被告人高田及び大和横浜支店の同寺島に対し、各別に、時価転換社債の発行を検討するよう依頼した。

(三)  ところで、同年四、五月ころの被告会社の株価は、一株一一〇円から一二〇円程度であり、出来高もせいぜい月間一五〇万株から二六〇万株程度であつて、株価が一般に値上りの傾向を示していたとはいえ、被告会社の株価が高騰するような格別の材料は見当たらない状況にあり、他方時価転換社債の転換価格は、従来時価転換社債発行時の株価を基準とし、その二パーセントないし一〇パーセント上回る価格とされていたため、前記三〇億円の資金調達に伴なう財務内容の強化を達成するには、株価を高騰させることが是非とも必要であつた。そこで被告人間邉は、被告会社において、従来から、安定株主工作及び株価の安定を図る目的で、従業員の親睦団体である如春会(昭和四三年ころから被告人栗崎が会長に就任。)が被告会社から株式の買付資金を借り受けるという形式をとつたうえ、如春会又は従業員名義で自社株を取得しこれを関連金融機関、事業法人等にはめ込んできたことに目をつけ、右の方法を利用して株価をつり上げる計画を立て、昭和四七年五月下旬ころ、右計画を被告人栗崎に相談したところ、同被告人も時価転換社債の発行か時価発行増資かのいずれかの方法により資金の調達を図るべきものと考えていたことから、右計画に賛同した。そこで被告人栗﨑及び同間邉は、同年六月一二日右計画を実行するため、前記如春会に対する貸付枠を従前の八〇〇〇万円から一億五〇〇〇万円に増額すべき旨の禀議を起こし、右禀議は、同月二四日決裁された。また被告人間邉は、そのころ、日興横浜支店の被告人高田、大和横浜支店の同寺島に対し、転換社債を発行する準備として被告会社の株価をつり上げるため自社株を買い付けて欲しい旨各別に依頼したところ、被告人高田、同寺島は、それぞれの上司にあたる被告人船越、同栗田の了承を得て右依頼を承諾した。更に被告人間邉は、被告会社の時価転換社債発行計画を知りその引き受けシエアの獲得を企図して同社の幹部に接近をはかつていた野村原町田支店の被告人後藤に対しても、同様の依頼をしたが、同被告人もこれを了承した。しかして同年六月一日から、右証券会社関係各被告人によつて、被告会社の資金による同社の株式の買い付けが開始されたが、右買い付けは、後記のとおり、同年七月一九日まで継続され、右期間中の買付株式総数は合計一一一万二〇〇〇株に上り、また株価は買い付け初日の終値一二二円が最終日には終値一八四円にまでつり上げられるに至つた。

(四)  ところで、被告人間邉は前記のとおり、日興横浜支店の被告人高田及び大和横浜支店の同寺島に対し、時価転換社債発行についての検討を依頼していたところ、その発行条件として野村、日興、大和、山一証券(株)(以下「山一」という。)の各大手証券会社の申合せにより自己資本比率が二〇パーセント以上でかつ純資産額が四〇億円以上であることが必要とされていたのに対し、被告会社においては自己資本比率が一八・九パーセントであり、純資産額も三六億円にとどまつていたため、右の条件を充たさず、また右発行条件が緩和される見通しもなかつたことから、被告人高田及び同寺島は、同年七月上旬ころ、同間邉に対し、各別に被告会社が時価転換社債を発行することは不可能である旨伝えた。

(五)  そこで、被告人栗崎及び同間邉は、右転換社債発行の計画を変更し、時価発行公募を含む増資によつて資金調達を図ることとし、同月中旬ころ、同間邉において、被告人高田及び同寺島に対し、各別に被告会社の資金需要の実体を説明したうえ増資案の作成を依頼したところ、被告人高田、同寺島はそれぞれ日興、大和の各本社株式引受部と打ち合せたうえ増資案をとりまとめ、被告人間邉のもとに提出したが、日興の増資案及び同日程表案は概ね左記のとおりであつた。

(増資案)

増資額(増資株数)

公募株数

株主割当株数

(1)案

一二億円(二四〇〇万株)

一二五〇万株

一一五〇万株(旧一株につき〇・二五株)

(2)案

一一億円(二二〇〇万株)

一〇五〇万株

右同(右同)

(3)案

一〇億円(二〇〇〇万株)

八五〇万株

右同(右同)

(増資日程表案)

昭和年月日

事項

四七・七・二六

新株式発行取締役会決議

〃・八・一九

有価証券届出書提出

〃・九・二七

権利落

〃・〃・三〇

割当日

〃・一一・九

公募価格につき届出先と打合せ

〃・〃・一〇

公募条件決定取締役会決議

株主割当申込受付開始日

〃・〃・一一

訂正届出書提出

公募株式引受契約締結

〃・〃・二〇

公募株式申込開始

株主割当申込期日

〃・〃・二四

公募株式募集締切

〃・〃・二七

失権株式処理取締役会決議

失権株式引受契約締結

〃・〃・二八

失権株式募集開始

〃・〃・二九

失権株式募集締切

〃・〃・三〇

払込期日

他方大和の増資案は左記のとおりであつて、今回は比較的小規模の増資を行うことにより、時価転換社債の発行基準を備えたうえ、次回に時価転換社債を発行することが得策であるとの考えに基づくものであつた。

増資額(増資株数)

公募株数

株主割当株数

七億六〇〇〇万円(一五二〇万株)

六〇〇万株

九二〇万株(旧一株につき〇・二株)

(六) 被告人栗崎及び同間邉は、被告人高田、同寺島から提出された前記各増資案を検討した結果、日興の増資案のうち公募比率が最も高い一二億円の増資案はその公募価格を一株二〇〇円とすれば増資額一二億円とプレミアム一八億七五〇〇万円(=150円×12,500,000株)との合計額が三〇億七五〇〇万円となり、公募株式引受手数料等を差し引いても懸案の三〇億円の資金調達が実現できることから、右一二億円の増資案を採用することとしたが、公募価格を一株二〇〇円とするためには株価などの程度につり上げればよいかを被告人高田、同寺島に打診したところ、右両名からそれぞれ野村、日興、大和、山一の各大手証券会社四社の申合せにより、公募価格は市場における同価格決定前日の終値、同価格決定前一週間の終値の平均、同価格決定前一ヵ月間の終値の平均の三者を、更に平均した価格から、一五パーセント前後を差し引いた価格とすることとされているので、公募価格を確実に二〇〇円とするには実際上権利落直前の価格を二八〇円台にまでつり上げておく必要がある旨の説明を受けたが、当時前記のとおり一七〇円ないし一八〇円台に高騰させていた被告会社の株価を更に権利落予定日である同年九月二七日の直前までに二八〇円台に引き上げることは、当時の市場の成り行きや被告会社の業績等からしてそのままではとうてい不可能であつた。

(罪となるべき事実)

第一相場操縦のうち変動操作

一  共謀

被告人栗崎、同間邉は、昭和四七年七月中旬ころ、前記のとおり、日興の増資案のうち公募比率の最も高い一二億円の増資案を採用して増資を実施するにあたり、増資に伴うプレミアムの獲得を協議した際、被告会社の株価を権利落の前日までに二八〇円程度につり上げるため、関係証券会社の日興、大和、野村の協力を得て、市場における自社株を大量に買い付けたうえ、これを関連金融機関、事業法人等にはめ込んで、浮動株を減少させると共に資金を回収し、更に自社株を買い付けるという方法により被告会社の株価をつり上げることを決意するに至つた。そして、被告人間邉において、同年七月中旬すぎころ、日興横浜支店の被告人高田を被告会社に呼び、被告会社は同被告人から提出された前記一二億円の増資案と同日程表案を採用し、同月二六日開催の取締役会において右増資案を提案することになつた旨を告げ、右被告会社の株価つり上げ計画を説明したうえ、「具体的な買い付け方法については一切を任せるから、被告会社の資金を有効に使つて自社株を買い上げ、これを増資の払い込みが終るまで持ちこたえてもらえるところにはめ込んでもらいたい。公募価格が二〇〇円となるように権利落まで株価を二八〇円程度まで引き上げてほしい。」等と述べて株価操作に協力するよう依頼したところ、同被告人は、被告人間邉の意図を了知したが、同被告人の依頼を断れば被告会社側の機嫌をそこね、公募株の引受シエアを引き下げられるかも知れないという危惧があり、逆にこれに応ずればかなりの株式売買委託手数料が得られ、日興横浜支店の営業成績を上げることができるとの配慮から、同被告人の依頼を承諾したうえ、日興横浜支店に戻り、支店長の被告人船越に対し、被告人間邉の依頼の内容を伝え、これに協力することを約束した旨報告したところ、被告人船越も、被告人間邉らの意図を了知したが、日興が被告会社の主幹事証券会社であることの立場を配慮し、日興横浜支店として前記計画に加わる意図を表明した。他方被告人寺島は、同月二六日被告会社が右増資決議を発表したことを知り、被告会社に赴いて被告人間邉に対し、大和の増資案が一蹴されたことの苦情を述べたが、その際、同被告人から前記被告人高田に依頼したのと同様の説明及び依頼を受け、株価操作に協力するよう要請されるや、被告人間邉の企図を了知したが、前記被告人高田と同様の危惧と配慮から右被告人間邉の依頼を承諾したうえ、大和横浜支店に戻り、支店長の被告人栗田に対し、右被告人間邉の依頼の内容を伝え、これに協力することを約束した旨報告したところ、被告人栗田も、被告人間邉の意図を了知したが、大和が被告会社の副幹事証券会社であることの配慮から、大和横浜支店として右計画に加わる意思を表明した。また被告人後藤は右同日の被告会社の増資発表を知り、被告人間邉らが自社株買い付けによる株価のつり上げを企図していることを察知したが、これに協力することによつて、株式売買委託手数料収入が得られるほか、被告会社の幹事証券会社としての地位を獲得できるかもしれないと考え、同日あるいは翌二七日の早朝、被告人間邉と連絡をとつた際、同被告人に対し、被告会社の自社株売買に関し、被告会社から株式売買の委託を受けたいと申出て、被告人間邉らの計画に協力する意思のあることを伝えたところ、同被告人は、自社株の買い付けが幹事証券会社のみに集中すると目立つので、適当に他の証券会社に分散させた方が得策であるばかりでなく、今後大量の買い付けによつて被告会社に累積することが予想される自社株のはめ込みについても業界第一位の野村の信用と組織力を利用することができるものと判断し、被告人後藤に対し、前記株価のつり上げ計画を説明すると共に、買い付け資金として関連会社の資金をも動員すると述べて、右計画に加担するよう求め、被告人後藤は右被告人間邉の申出を了承した。

以上のとおり、先ず被告人栗崎及び同間邉と被告人高田との間に、次いで同被告人と被告人船越との間に、また被告人栗崎及び同間邉と被告人寺島との間に、次いで同被告人と被告人栗田との間に、更に被告人栗崎及び同間邉と被告人後藤との間に、それぞれ順次、被告会社の株価を権利落までに二八〇円位までつり上げて公募価格を二〇〇円とする増資を実現するため、一般投資家らを売買取引に誘引する目的をもつて、被告会社の自社株の買い付け等による変動操作を行うことの共謀が成立した。

二  犯行

被告人栗崎及び同間邉は被告会社の、被告人船越及び同高田は日興の、被告人栗田及び同寺島は大和の、被告人後藤は野村の各業務に関し、被告会社が三〇億円の資金の調達を図ることを目的として昭和四七年七月二六日の同社取締役会において決定した時価発行公募を含む一二億円の増資を行うに際し、前記のとおり東京証券取引所第一部市場における被告会社の株価が当時終値で一株一七〇円ないし一八〇円台であつたのに、これを同年九月二七日の権利落までに二八〇円位まで高騰させて時価発行の公募価格を一株二〇〇円位とすることにより約一八億円のプレミアムを得ようと企て、被告会社の資金等により被告会社の株式を大量に買い付けるなどして右東京証券取引所第一部市場における被告会社の株式の売買取引を誘引する目的をもつて、共謀のうえ、共同して、同年七月二七日から同年九月二六日までの間、右東京証券取引所第一部市場において、別表第一の(一)記載のとおり、買い上がり買い付け、買い支え等の方法により、被告会社株式合計六一四万九〇〇〇株を継続して買い付け、更に別表第一の(二)記載のとおり同株式合計一〇万四〇〇〇株につき仮装の売買をするなど、その相場を変動させるべき一連の売買取引をした。

第二相場操縦のうち安定操作違反

一  共謀

前記変動操作の結果、被告会社の株価が権利落の前日である昭和四七年九月二六日には一株二五六円にまで引き上げられ、翌二七日の権利落当日には二二〇円となつたが、右株価が変動操作により実勢よりも相当つり上げられたものであつて、これを自然の成り行きにまかせるときには更に下落し、そのため公募価格算定期間である同年一〇月一一日から同年一一月九日までの間に公募価格が所期の二〇〇円を割る事態にもなりかねないおそれがあつたことから、被告人栗崎及び同間邉は、相談のうえ、引き続き買い付けを行つて市場における被告会社の株価の下落を防ぎ、少なくとも右二二〇円程度の範囲に維持するため、主幹事証券会社の日興横浜支店に依頼して買い支えを行つていくことを決意した。そこで、被告人間邉において、同年九月下旬ころ、被告人高田を被告会社に呼んで右の事情を説明し、協力方を依頼したところ、被告人高田は右被告人間邉の意図を了知したが、「権利落後は、被告会社の系列会社の資金で買い付ける方が目立たない。」と被告人間邉に助言するなどして同被告人の申出を承諾したうえ、日興横浜支店において、被告人船越に対し、右被告人間邉の申出の内容を報告すると共に、これに協力することを約束した旨伝えた。これに対し被告人船越は、被告人間邉が企図した株価安定操作の計画を了知したが、主幹事証券会社として本件増資計画に協力してきた関係もあり、日興横浜支店としてこれに加担することを承諾した。そして、被告人栗崎及び同間邉は、右の経緯により権利落直後から被告会社の株価を安定させるため、専ら日興横浜支店の被告人高田に任せて買い支えを行つていたが、同年一〇月一一日の公募価格算定期間の開始が近付くにつれ、値くずれがおきて公募価格が二〇〇円を割る事態が生ずることを危惧すると共に、一層の株価の安定を図るため、副幹事証券会社の大和横浜支店にも依頼して買い支えを行うことを考え、同年一〇月初旬ころ、被告人間邉において、大和横浜支店の被告人寺島に対し、「日興にも頼んでいるが、日興だけでは目立つので、ぼつぼつ大和でも買いを出してもらいたい。」と述べ日興と同様の買い支えを行うよう依頼した。これに対し被告人寺島は、右被告人間邉の意図を了知したが、副幹事証券会社として本件増資に協力してきたこともあつて、右被告人間邉の依頼を承諾し、大和横浜支店として、右安定操作に加担することを約束した。

以上のとおり、先ず被告人栗崎及び同間邉と被告人高田との間に、次いで同被告人と被告人船越との間に、また被告人栗崎及び同間邉と被告人寺島との間に、それぞれ順次、公募価格を二〇〇円とするため、権利落後の株価の安定を図る目的をもつて、被告会社又は系列会社の資金により被告会社の株式につき一連の売買取引を行うことの共謀が成立した。

二  犯行

被告人栗崎及び同間邉は被告会社の、被告人船越及び同高田は日興の、被告人寺島は大和の各業務に関し、前記のとおり時価発行の公募価格を一株二〇〇円とするため、証券取引法施行令(昭和四〇年政令第三二一号)二〇条一項で定めるところに違反して、前記変動操作により引き上げられた被告会社株式の権利落後の相場を安定する目的をもつて、共謀のうえ、共同して、昭和四七年一〇月二日から同年一一月八日までの間、前記東京証券取引所第一部市場において、別表第二記載のとおり、買い指値以下の売り注文を買いさらうなどの方法により、被告会社株式合計八六万六〇〇〇株を継続して買い付ける一連の売買取引をした。

第三自己株式の不正取得

被告人栗崎及び同間邉は、前記変動操作及び安定操作違反の取引を行うにつき、被告会社の計算において不正に同社の株式を取得しようと企て、共謀のうえ、昭和四七年七月二七日から同年一一月八日までの間、前記東京証券取引所第一部市場において、別表第三記載のとおり、日興ほか八社の証券会社をして鎌倉照光らの名義で、被告会社の資金合計一〇億二五七〇万九〇〇〇円をもつて同社の株式合計四三六万八〇〇〇株を買い付けさせ、もつて被告会社の計算において不正に同社の株式を取得した。

(証拠の標目)(略)

(争点に対する判断)

弁護人らは、本件各公訴事実につき種々主張するので、主な争点について当裁判所の判断を示すこととする。

第一公訴棄却の申立について。

一  憲法三一条違反の主張

弁護人は、先ず相場操縦に関する禁止規定のうち、変動操作の禁止を定めた証券取引法一二五条二項一号後段の規定及び安定操作の禁止を定めた同条三項の規定は、その内容がいずれも曖昧かつ不明確なものであり刑罰法規の内容をなす構成要件として無効であるから、本件のうち右各法規を適用した公訴提起は無効であり、刑訴法三三八条四号により公訴棄却の判決をすべき場合にあたると主張する。

そこで検討すると、一般に法規は規定の文言の表現力に限界があるばかりでなく、その性質上多かれ少なかれ抽象性を有し、刑罰法規もその例外をなすものではないから、禁止される行為とそうでない行為の識別を可能ならしめる基準といつても、必ずしも常に絶対的なものを要求することはできず、合理的な判断を必要とする場合があることを免れないものであり、それゆえ、ある刑罰法規が曖昧不明確のゆえに憲法三一条に違反すると認めるべきかどうかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるか否かによつてこれを決定すべきである(最高裁判所昭和四八年(あ)第九一〇号、同五〇年九月一〇日大法廷判決、刑集二九巻八号四八九頁参照)。もとより、現行証券取引法は、戦後の民主化政策の一環として誕生したもので、証券取引の公正、円滑を図るために制定されたものであり、その内容においてアメリカ合衆国の一九三三年証券法及び一九三四年証券取引所法に範をとつており、現に証券取引法一二五条はアメリカ合衆国の右一九三四年法九条をほぼ継受するものであることは所論のとおりであるが、それだからといつて、右一二五条の規定が我国において適用される場合において、その法文の意義が直ちに不明確かつ曖昧になる筋合いのものではなく、証券取引法の目的及び同法一二五条の立法趣旨に照らせば、同条は自由公開の有価証券市場を確立するため、本来正常な需給関係によつて形成されるべき相場に作為を加える詐欺的な不正取引を禁止しようとしたものであることが明らかであり、従つて、同条二項一号後段の禁止規定のうち、「売買取引を誘引する目的」とは、市場の実勢や売買取引の状況に関する第三者の判断を誤らせてこれらの者を市場における売買取引に誘い込む目的、すなわち、本来自由公開市場における需給関係ないし自由競争原理によつて形成されるべき相場を人為的に変動させようとの意図のもとで善良な投資家を市場における売買取引に参加させる目的をいい、また「一連の売買取引」とは、継続した誘引目的の発現と客観的に認められる複数の取引をいうと解すべきであり、更に「相場を変動させるべき取引」とは、同号が売買取引のほかその委託、受託をも併せて禁止していることに徴し、市場価格を変動させる可能性のある取引を広く指称すると解すべきであるところ、通常の判断力を有する一般人が、具体的場合において右条項による禁止に触れるものであるか否かを判断するにあたつては、当該取引等が右のような目的によるものか否かを考えること等により通常その判断にそれほどの困難を感ずることはないと認められる。また同条三項にいう「相場を安定する目的」も、右のような市場原理に反して人為的に相場を形成する意図のもとで当該有価証券の価格の下落を防ぎ又は遅らせる目的をいい、「一連の売買取引」とは、継続した安定目的の発現と客観的に認められる複数の取引をいうものと解すべきである。もつとも、同条三項、同法施行令二〇条一項は、「有価証券の募集又は売出しを容易にするために行う場合」には、当該有価証券の価格を安定する目的で人為的に一連の売買取引を行うことを許容しているが、それは元来企業が有価証券の募集又は売出しを行う場合には、大量の有価証券が市場に送り出され一時的な供給過剰の現象を生ずることがあり、そのために自然の需給関係等に任せておくと、当該有価証券の価格が下落して、ひいては有価証券の募集又は売出しが一般的に困難になることがあり得ることから、法は右の場合に限り人為的な相場の安定となる取引を許容しているのであり、右以外の場合には三項による処罰の対象となると解される。右によれば、通常の判断力を有する一般人が具体的場合において右条項による禁止に触れるものであるか否かを判断するのにそれほどの困難を感ずることがないことは、先に述べたところと同様である。

以上のとおりであつて、証券取引法一二五条二項一号後段及び同条三項の規定は、犯罪構成要件の内容をなすものとして明確性を欠き憲法三一条に違反するものとはいえないことは明らかである。

弁護人は、次に証券取引法一二五条三項の安定操作禁止規定には文言上同条二項のような主観的要件が定められていないところ、もし同条三項の解釈上右要件を不要とすると、同条二項の場合と著しく権衡を失し、いわゆるオーバー・インクルーシブとなると主張する。

そこで検討すると、同条三項は政令で定めるところに違反してした安定操作を禁止し、右条項に基づく同法施行令二〇条一項は、安定操作取引は「有価証券の募集又は売出しを容易にするために行う場合」でなければすることができない旨を規定している。ところで、右施行令二〇条一項は昭和四六年政令第一五〇号によつて現在の体裁に改正されたものであるが、右改正前の規定は、「有価証券の募集又は売出しを容易ならしめるために安定操作をしようとする者」についての手続等を規制していたにとどまり、いかなる行為が法一二五条三項の禁止の内容となるかを明示していなかつたため、安定操作違反として禁止される内容がいかなるものかについて議論の余地があり、同法一二五条二項を同条三項の一般法と考え、同条三項違反が成立するためには、同条二項の誘引目的をも必要と解する見解もなくはなかつたところから、施行令改正の際、安定操作取引は「有価証券の募集又は売出しを容易にするために行なう場合」でなければすることができない旨を定めて安定操作取引の禁止範囲についての明文を新たに設けると共に、その実体が右の場合である限り、当該取引等が同法四条一項及び同法施行令二一条以下の手続を履践しているか否かとは無関係に安定操作として許容される旨を明らかにする趣旨で規定を整理し直したものと認められるから、右の経緯等に徴し、証券取引法一二五条三項違反の成立要件としては、同条二項の誘引目的が存在することを要しないことは明らかである。そして、同法一二五条二項及び三項は、ともに自由公開の有価証券市場を確立するため、これに作為を加えた不正取引を行うことを禁止するという共通の趣旨目的に出ていることはいうまでもなく、従つて、安定操作も一種の相場操縦にほかならないが、有価証券の募集又は売出しを容易にするためには、募集期間中において、一定価格の維持・安定を目的とする取引を行う必要がある反面、このような場合には、一般投資家としても安定操作が終了した場合当該有価証券の価格が下落する危険性を覚悟して取引に参加できる点において弊害が少いものであり、このように個々の立法目的実現のための規制の必要性の程度に差異があること等を考慮すると、同法一二五条二項と三項のうち、前者のみに誘引目的の要件を付加し、後者にはこれを不要とすることも、立法裁量の範囲内にあるものとして許容されるものというべきであり、右は、立法技術上同一の客観的行為が右二項及び三項の双方にあたるようにみえる場合にその一方のみが規制される結果となるときにおいてもあてはまるものというべきである。

また、弁護人は、同法一二五条三項は政令への白地委任であると主張するが、同項は有価証券の相場を釘付け、固定し、又は安定する目的をもつてする有価証券市場における一連の売買取引等をする行為が政令の定めるところに違反してされた場合につきこれを禁止しているものであつて、その禁止範囲の大枠はすでに法律により明確に規定されており、証券取引法施行令二〇条一項は、「法一二五条三項に規定する目的をもつてする有価証券市場における一連の売買取引(以下「安定操作取引」という。)又はその委託若しくは受託は、有価証券の募集又は売出しを容易にするために行う場合でなければ、することができない。」と規定し、法律の委任に基づき法律の定める安定操作取引の禁止の範囲を限定すると共に、二〇条二項以下の規定において、許容される安定操作取引において遵守すべき事項を定めているにすぎないのである。右のとおり、法一二五条三項は、刑罰法規の内容を白地委任したものでないことはもちろん、同法施行令二〇条一項は、法の委任の範囲を逸脱したものでないことも明らかであるから、憲法七三条六号但書に違反するものではない。

弁護人の右主張は、いずれも採用することができない。

二  憲法一四条違反の主張

被告会社らの弁護人は、検察官は証券取引法一二五条二項一号後段及び同条三項に違反した崎して被告会社、被告人栗崎及び同間邉を起訴しているが、本件において、右各法条の違反罪が成立するとすれば、直接市場に発注する証券会社の方が刑事責任が重い筈であるのに、検察官は各証券会社をことさら起訴せず、責任の軽い被告会社、被告人栗崎及び同間邉を起訴した点において右被告人らにかかる本件公訴提起は憲法一四条に反する無効なものであるから、刑訴法三三八条四号により公訴棄却の判決をすべきであると主張する。

しかしながら、本件各証券取引法違反の犯行は、判示認定のとおりであり、右犯行の計画・立案から実行に至る全過程において被告人栗崎及び同間邉の占めた地位、役割等にかんがみるとき、市場において現実に変動操作ないし安定操作を行うべき者は証券会社であり、従つてこれら実行行為を担当した者が、日興、大和、野村の各証券会社所属の相被告人らであつたとしても、なお被告人栗崎及び同間邉の刑責は右証券会社所属の相被告人らのそれに比して重いと認められる本件においては、検察官が関係証券会社を起訴せず、被告会社、被告人栗崎及び同間邉を起訴したことに訴追裁量権の著しい逸脱があるとはいえないことが明らかである。それゆえ、本件公訴提起に所論の違法はなく、所論は採用できない。

第二被告人らの検察官に対する各供述調書の任意性及び特信性について。

弁護人は、被告人らの取調べを担当した検察官は、被告人らが本件株式の売買を株主安定化工作として行つたものであつて、相場操縦特に変動操作を意図して行つたことはない旨供述したのに対し、相場操縦ときめつけ、被告人らを逮捕、勾留したうえ、取調べに際し机をたたくなどして威嚇的態度をとり、検察官の意図する供述をしなければ、上司、部下職員等を逮捕、勾留して取調べるなどと告げたため、被告人らは心ならずも検察官に迎合するような供述をし、あるいは被告人らが供述していない内容を記載した調書に署名したものであるから、被告人らの検察官に対する各供述調書は任意性及び特信性を欠き、証拠能力がない旨主張する。

そこで先ず、本件捜査の経緯及び被告人らの取調べ状況等についてみると、関係証拠によれば次のとおり認められる。すなわち、大蔵省証券局は昭和四七年一一月ころ、被告会社及び関係証券会社である日興並びに大和に対し、本件株式の売買について変動操作等の容疑があるとして調査をしたが告発するに至らず、他方東京地方検察庁においても独自に捜査を進めていたところ、相場操縦の疑いが濃厚となつたことから、水原敏博検察官を主任として本格的な捜査に乗り出し、被告人ら関係者に任意出頭を求めて取調べを始め、昭和四八年二月には被告人間邉、同高田、同寺島の三名に対する変動操作を被疑事実とする逮捕状をとり、被告人間邉は右水原検察官が(その後同被告人は松尾邦弘検察官が担当)、被告人高田は園田幸男検察官が、被告人寺島は板山隆重検察官がそれぞれ担当することとして取調べが開始されたこと、右被告人らはいずれも当初本件株式の売買は専ら安定株主工作をすすめるために行われたものであり、相場操縦を行つた事実はない、あるいは相場操縦の事実は知らなかつた旨弁解していたが、同月二二日逮捕されるや右の供述態度を急変し、逮捕当日あるいはその翌日には、本件相場操縦の事実を自供するに至つたものであり、その供述内容をみると、被告人間邉の場合は、「本件公募増資の背景として被告会社は、三〇億円以上の事業資金を調達する必要があつたが、その調達方法として計画した時価転換社債の発行が不可能となつたため、時価発行公募を併用する増資を行うこととし、公募価格をできるだけ高くするために浮動株を被告会社の自己資金で買いさらうことを含む株価のつり上げを被告人高田、同寺島、同後藤らに依頼し、具体的な売買の発注方法などはそれぞれの証券会社に一任して売買取引を行い、その結果として予定どおり公募価格二〇〇円による一二五〇万株の時価発行公募増資を実現した。被告会社が如春会に貸し付ける形でプールした自己資金で市場から買い上げた浮動株は、大手金融機関等に引き取つてもらい、自己資金の回転を図つた。」という内容のかなり詳細なもの(証拠略)であり、また被告人高田の場合は、「昭和四七年七月上旬ころ、被告人間邉に呼ばれ、同年一一月三〇日払込で時価発行公募一二五〇万株を含む一二億円の増資を決議するので公募株の五〇パーセントを日興証券において引き受けるよう依頼され、その後間もなく被告会社の会議室に被告人寺島を含めて協議した際、被告人間邉から公募価格を二〇〇円にしたいが、被告会社にも資金があるから、どんどん株式を買うなどの方法で株価をつり上げてもらいたいと依頼され、これを断れば公募株の引受を断念しろと言われかねない雰囲気であつて、そうなれば同被告人の首がとぶだけでは済まないと思い、右の依頼を了承した。右会談の内容を被告人船越にも報告したところ、同被告人も被告会社に協力せざるを得ないとして了承した。被告人高田らの行つた具体的な売買の発注方法は、被告人間邉らから大まかな買付数量の指示を受けて、前日終値より高い指値による買い注文又は成行買い注文をどんどん出す方法、同時刻に指値を一円刻みに高くした指値買い注文をどんどん出す方法をとり、さらに日興証券から前日終値又は直近値より高い指値売り注文を出し、買い手がつかないときは、遠山証券本店の斉藤賢弘に依頼して、遠山証券から右指値以上の買い注文を出してもらい売買を成立させ、或いはその逆の売り注文により売買を成立させる方法をとり、株価のつり上げを行つた。」という詳細なもの(証拠略)であり、さらに被告人寺島の場合は、「昭和四七年七月ころ、被告人間邉、被告会社の財務課長小平修二に呼ばれ、被告人高田と共に会談した際、被告会社側から、増資の際の公募価格を二〇〇円にしたいと言われ、被告人寺島が、『無茶だ。』と言つたところ、被告人間邉が、『どうしても二〇〇円にしたい。両幹事証券がしつかりしなければ、野村証券原町田支店に知つている者がおり、株価を三〇〇円位までは簡単に持つて行くと言つて来ているから、二社とも頑張つて欲しい。五億円位の資金は出せるからその範囲で株価を推進して欲しい。前回の増資のときも如春会や社員名義で株を買い付け、大蔵省の指摘を受けたが興銀に入れるための買い付けであると説明したら、そのまま通つたので、今回もその方式でやつて欲しい。』との依頼をした。被告人寺島は、右の依頼により日興証券の被告人高田と話し合い、被告会社に協力することを決めたが、その際、同被告人側から、株価をつり上げるための目途として、権利落までが一つのタイミングであり、その後においては会社関係の者は手を出せないなどと注意事項を述べた。」というもの(証拠略)であり、それぞれ公募価格二〇〇円を実現する目的で、株価をつり上げるための売買取引を行うことを共謀したことについては一致した供述をしているものの、その具体的な供述内容は三者三様のものであり、被告人らのみが知り得たと思われる事実をも具体的に挙げている詳細な内容のもので、その後の取調べにおいて更に具体的に詳細な供述をしているものの、その内容はいずれも当初の自白内容を具体化し、更に関係資料と照合して補充するものであつて、これらを仔細に検討してもその間に供述内容やその姿勢を飜えした形跡は全くなかつたこと、そして、検察官は、同年三月五日被告人栗崎、同船越、同栗田に対しても逮捕状の発布を得て同人らを逮捕し、被告人栗崎は前記水原検察官(その後同被告人は前記松尾検察官が担当)が、被告人船越は前記園田検察官が、被告人栗田は前記板山検察官がそれぞれ担当者となつて取調べをし、更に翌六日には被告人後藤について逮捕状を得て同人を逮捕し、水原検察官(その後同被告人は書上由紀夫検察官が担当)が担当者となつて取調べを行つたが、右被告人四名も前記被告人間邉らと同様、当初犯行を否認し種々弁解をしていたが、逮捕されるやその日ないし翌日には本件相場操縦の事実を認める供述をするに至つたもので、その内容をみると、被告人栗崎の場合は、「七月一〇日ころと思うが、できるだけ高い公募価格により時価発行増資をするため日興証券横浜支店関係者と打合せを行つた被告人間邉から、一株二〇〇円で公募するためには権利落までに株価を二八〇円位にまで上げなければならないとの報告を受けたので、被告人自身も日興証券の被告人高田や横浜支店長に株価を上げるよう依頼した。また被告人間邉を通じて証券会社に対し、被告会社の手金で被告会社の株式を高く買い上げてもらうよう申入れ、被告人寺島にも同様の依頼をして相当数の株を高く買い上げたが、手金にも限度があるので買い上げた株をかねてから安定株主工作の一環としてお願いしていた銀行筋などに再度強くお願いして引き取つてもらつた。なお、被告人らの行為が証券取引法違反になることは、ある人から聞いて知つている。」という内容の調書をはじめとして合計三通(証拠略)の調書において詳細に事実を供述しているものであり、また被告人船越の場合は、「昭和四七年六月初めころと思うが、被告会社に対し、同業の日本農産工業が転換社債を発行するという情報を入れたところ、被告会社からも被告人高田を通じて転換社債の発行を検討して欲しい旨の依頼があつた。しかし同社の純資産が四〇億円に満たないため同年七月一二日ころと思うが、転換社債の発行はできないと伝えたが、その後まもなく、被告人高田から被告会社が増資することに決めたと聞き、その後具体的に増資規模が一二億円で、株主割当のほか一二五〇万株を公募するという報告をうけて、本社証券引受部と相談のうえ増資日程案を作成した。被告会社の増資決議があつたころ、被告人高田から、被告人間邉に公募価格をどうしても二〇〇円にしたいので株価を高くするため、被告会社の資金で同社の株を買つてくれと依頼された旨の報告を受け、右申立に応ずるのは容易なことではないと思つたが、その申出を断れば被告会社の機嫌を損じて公募株の引き受けシエアを落されたり、ひいては幹事証券会社の地位を落されては大変だと思い、悪い事とは思いながら株価操作に協力することになつた。当時、被告人高田から大和証券も株価操作を依頼されており、野村証券でも猛烈な幹事攻勢をかけていると聞いている。被告会社の依頼により同社株の買い付け等をしたのは被告人高田であるが、被告人自身も被告会社の株式売買に関する板の状況、ザラバの気配を本社株式部を通じて日興証券の場立ちから聞き、これを被告人高田に伝えたり、余り買い付けが多すぎるときは買い控え方が良いという注意をした。」という内容であり(証拠略)、また被告人栗田の場合は、「昭和四七年七月下旬に被告会社の増資に関し、大和証券からも増資案を出したが、発表された増資内容は日興証券の案に則つたものであり、公募株数が大きすぎると思つたものの、増資が発表された以上全面的に協力することとした。時価発行公募において最も大切なことは株価対策であるが、八月中旬までの間に被告人寺島を通じて被告会社側が株価を二五〇円以上に上げたいという意向であることを知り、また被告会社において三億ないし五億円の資金を用意し、個人名を使つて市場において被告会社株を買いさらうことを依頼され、その際被告会社から野村証券の積極的協力があることを仄めかされ、協力しないと幹事証券をおろされるかも知れないというので協力することに決めた。被告会社は前回増資のとき如春会名義で自社株を買い付け、大蔵省から始末書をとられたことがあり、今回は個人名義を使うことにするというので被告人としてもそういう方法で被告会社の委託に基づいて株の買い付けをする了解を与えた。具体的な買い付けは被告人寺島が行つたが、社内の席も近いのでその様子は知つており、被告人自身も被告会社の寄り付き気配を問合せたこともある。買い上げ株のはめ込み先については、被告人寺島の依頼もあり、八月下旬の東京ブロツク神奈川グループの打合せ会の席上ダイヤモンドレポートのコピーを配布して被告会社を推せんし、前日終値程度で増資付権利を持つてもらえる客を探して欲しいと依頼し、八月二九日朝各店に問合せた結果、横浜支店分を加えて二〇万株を一般顧客層にはめ込むことに成功した。同様のことは九月七日ころも行い、四〇万株のはめ込みに成功した。なお被告会社から買い上げた株のはめ込み先法人リストの提出を要求されており、九月四、五日ころ野沢屋、オリエントリース等約一〇社のはめ込み先リストを提出したが、実際にはめ込みが成功したのは野沢屋とオリエントリースの二社だけであつた。」という詳細な内容のものであり(証拠略)、また被告人後藤の場合は、「逮捕により気が動転していたが、一日たつたのである程度気分が落着いたこと及び営業熱心とはいえ行きすぎたことをして反省している。」との前置きにつづいて同被告人が被告会社に接近した当時の状況や考え方を詳細に述べたのち、「被告会社から如春会名義で自社株買い付けの発注を受けて執行したことがあつたが、七月下旬ころ新聞紙上で被告会社の増資発表を知り、公募の内容から被告会社としては株価のつり上げを希望していると判断し、被告人間邉に電話でうちにも被告会社の株を買わせて欲しいと申出たところ、同被告人から公募価格を高くするため、できるだけ高くなるように取敢えず二〇万株だけ買つてくれと依頼された。そこで翌日の市場で景気付けに威勢良く高く買い上げたほか、支店の客にも被告会社の株をすすめ、また被告人間邉に関連会社等にも買わせるようすすめ、京浜倉庫や日本ペツトフードの資金で被告会社の株式を買い付けた。」という詳細なものであり(証拠略)、いずれも本件株価操作に関与した点については一致しているものの、その供述内容はそれぞれ自己の関係した部分について詳細であり、供述時点において被告人のみが知り得た事実をも具体的に挙げており、その後の取調べにおいて更に詳細な供述調書が作成されているものの、その内容はいずれも前記被告人間邉らの供述と同様、当初の自白内容を具体化したに過ぎないものであり、その間に供述内容や供述姿勢を飜えした形跡は全くないこと、被告人ら七名はいずれも勾留されたうえ(被告人間邉、同高田、同寺島については勾留延長がなされている。)、身柄拘束のまま同月一五日本件各公訴事実により起訴されるに至つたこと、以上の各事実が認められる。

ところで、被告人らはいずれも当公判廷において、右捜査段階における自供を飜えし、本件株式の売買は株主安定化工作として行つた旨弁解したうえ、前記弁護人の主張にほぼ沿う供述をしているが、その供述は、関係証拠に照らしとうてい措信できない。すなわち、関係証拠によれば、本件は株式取引にかかる事案であり、事実関係を解明して行くうえで、株式取引の仕組みや具体的な株式取引に関する実務の知識が不可欠であるが、被告人らの取調べに当つた前記各検察官は、この種事件の捜査の経験はもとより、株式取引についての専門的知識もなかつたものであり、加えて、それまでの捜査により集められた資料としては、被告会社の設立当初からの資本金の増加状況、本件当時の被告会社の株価及び株式の取引量の推移状況程度のものしか存在せず、これらを基礎資料として被告人らの取調べに当らざるを得なかつたこと、そのため、本件捜査においては、犯意や共謀の具体的内容等被告人らの専ら主観的な領域に属することはもちろん、株式取引の仕組みや具体的取引の経緯及び状況等についても被告人らの供述ないし説明に頼らざるを得なかつたものであつて、所論主張のように検察官において意図した供述を強制ないし誘導によりさせるということはそもそも困難であつたものと認められる。証人書上由紀夫、同園田幸男、同板山隆重は、当公判廷において、被告人らの取調べについて、まず各被告人本人から説明を受け、あるいは上申書を提出させたうえ、関係資料をもとに被告人らの述べたところを念を押し確認しながら事実関係を把握しこれを録取するという方法をとらざるを得なかつたものであり、実際に右のようにして被告人らを取調べた旨供述しているが、その供述は、各供述調書の記載内容に照らしても真実を述べたものと認められる。後記のとおり、本件株式の取引状況に関する被告人らの検察官に対する供述の中に才取会員注文控(以下、「板」という。)の記載と異なる事実を供述している部分があり、右は検察官において被告人らが自発的に説明し供述するところを信頼しこれを調書にしたために生じたものであるが、前記のような取調べがなされていたことは、右の事実からも窺知できる。もつとも、前記各取調担当検察官は被告人らの供述内容が曖昧であつたり、関係資料等に照らし不自然である場合には、これらの点を明らかにするために追及して取調べをしたこともある旨供述しているが、前記本件捜査の経緯、被告人らの取調べ状況等に照らし、ことさらに机をたたいて怒鳴りつけ、威嚇的な態度をとるなどして自供させることを必要とするような情況の存したことは全く窺われないのであり、従つて、そのような事実があつたものとはとうてい認められない(なお崎、被告人栗崎及び同間邉の弁護人は、検察官と右各被告人との間で、捜査段階において、被告会社の当時の代表取締役大津利の取調べをしないとの約束がなされ、その約束のもとに本件各事実を認める供述調書が作成されている旨主張するが、右各被告人は、当公判廷において、右のような約束があつたことを認める供述をしていないのであり、むしろ自分達が自白しなければ代表取締役の大津利が逮捕されるかもしれないと一方的に思つた旨供述しているにすぎないから、所論は理由がない。)。また前記取調担当検察官の証言によると、各検察官は、被告人らの取調べにあたり、被告人らに押収してある関係資料を示して供述内容の真偽を被告人らに確認させながら取調べを行い、その供述を聴きながら内容をメモに整理したうえ、被告人らの面前において検察事務官に口述して録取させ、これを被告人らに読み聞かせて間違いないことを確認したうえ署名押印を得ていたものであり、また被告人らから訂正の申立があるとこれを認めその旨調書に記載していることが認められる。右被告人らの各供述調書添付の一覧表や上申書についても、被告人らが関係資料を参考にしながら自ら記憶を喚起して作成したものであり、取調検察官がとくに指示して特定の内容や表現を記載させたり、作成内容に手を入れて書き直させたりした形跡はない。以上のほか、本件は前認定のとおり当初大蔵省証券局が調査を始めたが告発するまでには至らず、そのため東京地方検察庁では独自の立場で捜査を行うこととなり、被告人らの取調べについても特に慎重にならざるを得なかつたものであり、右の事情は被告人らに対する逮捕状の請求が三回にわけて行われていること等からも看取できること、被告人らはいずれも捜査段階から弁護人を選任していたものであるが、検察官は右弁護人からの接見の申出を拒否したことはなく、また弁護人以外の各被告人の家族に対しても接見を認めていた等の事実を総合すると、被告人らに対する検察官の本件取調べは、専ら関係資料に基づく被告人らの自発的な説明と供述を頼りに事実関係を明らかにして行くという方法により慎重に行われたことは明らかであつて、被告人らが当公判廷で述べているような違法、不当な取調べがなされたものとはとうてい認められない。

なお弁護人は、証券会社関係の被告人の検察官に対する供述調書の本件株式の具体的な取引状況に関する供述中には、板の記載と明らかに異なる部分や買い注文を同時刻に一円刻みで出したという市場規則上あり得ない発注をしたことを述べた部分が随所に認められ、株式取引の専門家たる被告人らの供述をそのまま録取したものとは認められないから、右供述部分はもとより、被告人らの供述調書全体の特信性ないし信用性はないと主張するので、検討する。被告人らの検察官に対する供述調書中に板の記載と異なる供述をしている部分が存することは所論指摘のとおりであるが、関係証拠によれば、右被告人らの供述部分は検察官の違法、不当な取調べにより供述し、調書に録取されるに至つたものではなく、被告人らが取調べを受けた際検察官に対し、本件株式取引については注文伝票、顧客勘定元帳、保護預り元帳等をみれば取引状況の詳細を思い出すと述べたことから、検察官において右資料を示し、被告人らがこれらに基づいて述べたところをそのまま録取したものであつて(所論指摘の部分が右注文伝票等に符合していることはその間の事情を示している。)、検察官において、株式の取引に通暁している被告人らが自発的に述べるところを真実であると信頼しこれを調書にしたため生じたことが明らかであり、右被告人らの検察官に対する各供述調書の特信性に影響を及ぼすものでないことはいうまでもない。なお、被告人高田は、検察官に対する供述調書において、板の状況を証券会社の売買担当者(以下「場立ち」という。)から聞いて場の状況をみながら発注したと述べているが、同時に八月下旬ころからは本社株式部が板の状況はもちろん、場の気配すら教えてくれなくなつたとも述べているのであるから、同被告人が発注にあたり認識した場の状況等が板から読みとれる状況と若干の差異があつたとしても異とするに足りないのであり、また本件被告人らが本社株式部等を通じて把握できる板の状況やザラバの気配なるものは、刻々変化する株式取引の実情等に照らしもとより正確なそれを期待できる性質のものでないことは明らかであつて、それゆえ、被告人らの発注が板の状況やそれから事後的に把握できる場の気配に照らし、高騰目的と背馳するものであるとか、右被告人らの供述が客観的事実と著しく異なり信用できないと評価すべきものでないことはいうまでもない。また、本件証券会社関係被告人らの検察官に対する供述調書中に買い注文を同時刻に一円刻みで出して、順次売り注文の安値のものから高値のものへと買い上げたとの供述部分があることは所論のとおりであるが、右被告人らの供述を関係証拠と対比して仔細に検討してみると、右発注は市場内における呼値としてのそれではなく、被告人らの所属する証券会社の内部における発注行為、すなわち、支店から本店を経由して市場係員に注文が伝達される過程のそれを意味するものと認められるから、その供述が市場規則上不可能な行為の供述であつて証券取引の専門家の供述としてあり得ないと主張するのは当を得ないものであり、本件被告人らの検察官に対する各供述調書の特信性はもとより、その他の被告人らの供述部分の信用性についてもこれを左右するほどのものでないことはいうまでもない。

その他所論が被告人らの供述調書の内容について主張する諸点を充分検討するも、被告人らの検察官に対する各供述調書の任意性及び特信性に欠けるところはないと認められる。

第三変動操作について。

一  弁護人は、本件株式の売買を行うにつき、被告人ら相互間で話合いが行われたことはあるが、その内容は被告会社の株主安定化工作に関するものであつて、被告人らが変動操作について共謀したことはない旨主張する。

そこで検討すると、被告人らはいずれも、捜査段階において検察官に対し、判示認定のとおり、本件株式の売買は、被告会社において増資により三〇億円の資金を調達し被告会社の自己資本比率を高くする等のため、公募価格を二〇〇円とすべく権利落直前の株価を二八〇円台につり上げる目的で行つたものであり、被告会社の被告人栗崎及び同間邉と、日興横浜支店の被告人船越及び同高田、大和横浜支店の被告人栗田及び同寺島、野村原町田支店の被告人後藤との間で順次共謀して変動操作を実行したものであることを関係資料を参考にしながら、詳細かつ具体的に供述しているものであつて、右被告人らの供述内容は相互に整合性が認められるのみならず、右変動操作に関与した関係者の供述内容とも一致し、しかも関係証拠によつて認められる本件当時における被告会社の経営状態、本件株式の具体的取引状況、株価の推移状況等の客観的な事実にも沿うものであり、右被告人らの検察官に対する供述は信用性の高いものと認められ、これら被告人の検察官に対する各供述調書を含む関係証拠を総合すると、本件変動操作に関する被告人らの具体的共謀状況は判示認定のとおりであると認められる。

ところで被告人らは、当公判廷において、前記所論に沿う供述をしているが、被告人らが協議のうえ行つた本件株式売買は単に株主安定化工作として行われたものではなく、変動操作を目的として敢行されたことが明らかであつて、右被告人らの公判供述はいずれも措信できない。すなわち、関係証拠によれば、被告会社は、判示認定のとおり、自己資本比率が低く、そのため売上高に比して経常利益が圧迫されて低水準であつたことから、以前から財務内容の改善が最大の課題とされていたうえ、被告会社において今後実績を伸ばしていくうえで畜産物の流通機構の拡大、輸入、加工の振興等を行う必要があり、そのため投資資金が必要であると考えられていたところ、昭和四七年に入つて金融が緩和されはじめたことから、被告人栗崎と同間邉との間で、この際右の懸案を解決すべく三〇億円程度の資金を調達することが本格的に協議されるようになり、これを実行に移すため日興横浜支店の被告人高田や大和横浜支店の同寺島らに相談が持ち込まれたが、当初は転換社債を発行するという方法が検討されており、被告人間邉は同年五月下旬から同年六月上旬にかけて、被告人高田及び同寺島のほか野村原町田支店の被告人後藤に対し転換社債を発行する準備として株価を上げるよう各別に依頼し、その結果被告会社の資金により合計一一一万二〇〇〇株を買い付けさせ、買付初日の終値一二二円を同年七月一九日には一八四円にまで高騰させている。その後右転換社債発行の計画は判示のとおりこれを断念し本件増資により前記資金調達を図ることに変更されたが、被告会社では、被告人高田から提出された前記増資案に基づき、三案につきいずれも公募価格を二〇〇円とする前提でそれぞれの案についての時価発行公募に伴うプレミアムの額を算出した内部検討資料を作成しているが(符7のうち公募付増資(案)と題するメモ)、右資料には権利落前の予想株価を一八〇円から二五〇円まで一〇円刻みに設定したうえ、これに対応する権利落後の株価が併記されており、右メモは当時の被告会社の株価の状況からみて人為的に株価を操作して高騰させることにより、公募価格を二〇〇円とすることによつて得られるプレミアムを目論んでいることが明らかである。しかるに被告人栗崎は日興から提出された増資案について、三〇億円の資金を調達するため右プレミアムが最大となる新資本金を三五億円とする案を実現すべく被告人間邉と話合い、結局右増資案を採用することとしたものであり、当時の被告会社の株価が一七〇円ないし一八〇円台にすぎず、この株価を前提に公募価格を試算すると一五〇円程度にしかならなかつたことからみて、右増資案を実現するためには人為的に操作して株価の高騰を図らざるを得なかつたことは被告人ら自身が十分承知していたことが明らかである。そして右被告会社の計画は、主として被告人間邉から日興の被告人高田、大和の同寺島、野村の同後藤に、各別に伝えられると共に、その間において本件変動操作に関する共謀が成立したことは、先に判示したとおり明らかであるが、なお、関係証拠によれば、本件増資発表後の昭和四七年七月末ころ、被告人寺島の提案で、被告人間邉、同寺島、同高田の三者により右計画の具体策について話合いが持たれた(いわゆる三者会談)ことが明らかであるところ、右話合いにおいて、かねて被告人間邉が被告人高田及び同寺島に対し個別に依頼した株価工作を改めて強力に依頼すると共に、過去の取引量等を勘案して増資期間中に二〇〇万ないし三〇〇万株の被告会社株式を買い付けないと権利落までに二八〇円台の高値を実現できないとし、その資金面の手当は被告会社において担当するが、日興、大和においても被告会社の資金で買い付けた被告会社の自社株を一時保有してくれるいわゆるはめ込み先を探して被告会社にその名簿を提出することなどを取り決めたこと、被告人間邉は、そのころ、京浜倉庫(株)の清水常務に依頼し、九月初めころまでの約束で同社の資金を被告会社の自社株買付資金に動員し、被告会社の株式を二〇〇万株程度買い付けてもらうことの了解をとりつけ、右の注文執行を野村に委託するため、被告人後藤を右清水常務に紹介し、被告人後藤は京浜倉庫(株)から被告会社株式の買付委託を受けて同年七月三一日から同年八月一六日までの間に市場から合計二一二万株に上る被告会社株式を買い付けたこと、更に被告人栗崎及び同間邉は、同月下旬ごろ、かねて如春会に被告会社の資金を貸し付ける形式で自社株買付の資金としていた一億五〇〇〇万円をすべて買付資金に投入してしまい、他方、被告人高田、同寺島に依頼した前記はめ込み先の開拓も思うにまかせず資金回転に困難を来たしたため、如春会に対する貸付枠を一挙に倍額の三億円とすることとして更に自社株買い付けをすすめ、また被告会社の子会社である日本ペツトフード(株)の資金も動員して八月二八日以降野村原町田支店に委託し三〇万株に上る被告会社株式を買い付けて株価のつり上げを図ったことがそれぞれ明らかである。なお本件増資期間中及びその前後の株式の取引状況、株価の推移状況の全体からみても、被告人らが前記増資計画を実現するため人為的に操作して株価の高騰を図つていたことが歴然としている。すなわち、被告会社では、昭和四七年七月二七日から同年一一月八日までの本件分の取引だけでも七〇一万五〇〇〇株という大量の株式を買い付け、また前示のとおり、本件前の同年六月一日から同年七月一九日までにも一一一万二〇〇〇株もの株式を買い付けているが、特定のはめ込み先も決まらないまま買い付けをすすめていたため、右買付株数に比して安定株主と目される金融機関、事業法人等に保有してもらえる株式数ははるかに少なく、そのため被告会社の保有株式数は累積し、ついに一部については証券会社を通じ市場を経て売却するなどの挙にも出ているのであり、被告会社の株式の売買出来高は、同年四、五月ころ月間一五〇万ないし二六〇万株程度にすぎず、株価も一一〇円ないし一二〇円程度にすぎなかったものが、同年六月以降同年九月までの出来高が五八〇万株余、一〇五〇万株余、七一〇万株余、四六〇万株余と急増し、その後権利落後の同年一〇月以降は、同年一二月までのそれも、一〇月が一二〇万株余、一一月が五〇万株余、一二月が三〇万株余と極端に減少し、株価も、終値で権利落前は二五九円(同年九月二二日)、権利落後は二三四円(同年一一月八日)と高騰しているが、その後は漸次値下りし、同年末には二〇六円で終つている。同年は一般に株価が値上りの傾向を示していたとはいえ、被告会社の株価が右のように高騰するような格別の材料はみあたらないところ、被告会社が前記買付を開始した同年六月からの株価の高騰の状況は前叙のとおりであり、同年末のダウ式平均株価は同年六月一日に比し一・四倍強であるのに対し、被告会社の右同期比率は二倍強(六月一日と一一月八日とを対比すると、二・二倍強)にも及んでいる。被告会社における自社株の取得株式数も、京浜倉庫(株)及び日本ペツトフード(株)の買付分を除いてみても、同年の七月が月間九五万株余、八月が九〇万株余、九月が二七二万株余、一〇月が三一万株余、一一月が三三万株余と、それぞれ被告会社株式の月間出来高の相当部分を占めるうえ、一日の出来高の全部又は過半数を被告会社が取得したものが約五〇日におよび、ことに同年一一月一日から同月八日までの取得株式数は全出来高の七二・九五パーセントにも及んでいるが、右期間は前叙のとおり時価発行公募価格決定に極めて重要な影響をもつ期間である(因に、その期間の終値は二二六円から二三四円に上昇している。)。

以上のような本件増資決定までの経緯、採用された増資案の内容、被告会社における買付資金の調達方法、及び被告人らの増資期間の前後における動静、本件増資期間の前後を含む間の買付株数、株価の推移状況、被告会社の取得株式の全出来高において占める割合等のほか、本件株式の買付について被告会社から巨額の買付資金が支出されていること、買付株式、指値・成行の別等一切が本件証券会社関係被告人らに一任され、被告会社従業員などの名義を使用しあるいはいわゆる地場受けの方法によるなどして買付がなされていること、被告会社の取得株式の処理状況等を総合すると、被告人らが、本件増資により被告会社のために三〇億円の資金を調達すべく株価を二八〇円台に高騰させて公募価格を二〇〇円にする目的で、本件変動操作を共謀したことは明らかであつて、単に安定株主工作をすすめるために本件株式の売買を行うことを話合つたにすぎないとの前記被告人らの公判供述はとうてい措信できない。

ところで、弁護人は、本件株式の売買により取得された株式の一部が金融機関、事業法人等の安定株主と目されるものにはめ込まれているが、右は本件株式の売買が安定株主工作を目的として行われたことを示すものであると主張する。本件買付により取得された株の一部が安定株主にはめ込まれていることは所論のとおりであるが、関係証拠によれば、本件変動操作は市場における浮動株を吸い上げて株価を高騰させるという方法により行われたものであつて、右目的達成に必要な資金を得るための手段として従前から行われていた安定株主へのはめ込みを併用し買付資金の回収をはかつていたものであり、従つて、安定株主へのはめ込みは、市場に出る浮動株を少なくすることと併せて被告会社の資金回転の方法と認められる本件においては、売買取引により取得された株の一部が安定株主にはめ込まれていることは本件株式の売買が変動操作であることを認定するうえで何ら支障となるものではない。また弁護人は、幹事証券会社が変動操作のように公募価格をつり上げるような行為に及ぶことは、その後大量の高価な公募株の引き受けを余儀なくされることになるからあり得ないと主張するが、関係証拠によれば、当時証券会社関係の各被告人にとつて、所論指摘の心配よりは被告会社の変動操作に加担することを拒否することによつて被告会社の不興を買い、主幹事証券会社あるいは副幹事証券会社から外されることの方がはるかに重大事であることは明らかであり、また本件公募株は募集期間中にすべて売却されているなど当時公募株の売却が特に困難となるような事情はなかつたものであつて、所論は理由がない。更に被告人後藤の弁護人は、同被告人は野村が幹事証券会社となり、社債等の引受シエアを獲得する余地はなかつたものであつて、本件変動操作に加担することはあり得ず、同被告人が同年七月下旬ないし同年八月上旬に行われた本件変動操作についての被告会社、日興、大和のいわゆる三者会談にも、同年一一月本件相場操縦の容疑により実施された大蔵省証券局の調査への対策協議にも出席していないことは、同被告人が本件変動操作の共謀に加わつていなかつた証左であると主張する。野村が幹事証券会社でなく、社債等の引受シエアを有していなかつたこと、被告人後藤が右三者会談及び対策協議に出席していないことは所論のとおりである。しかしながら、関係証拠によれば、被告人後藤が本件変動操作のための買い付けを行うことが同被告人の営業実績になることは多言を要しないところであり、また右三者会談は野村が本件変動操作に関与していることを知らなかつた被告人寺島が主幹事証券会社の日興と買い付けた株式のはめ込み先等で競合しないように協議の場を持ちたいと提案したことから実施されたものであり、他方被告会社は野村に対しては、右日興及び大和の幹事証券会社とは別に本件株式の売買を依頼していたものであつて、被告会社において右三者会談に野村の被告人後藤を参加させる必要もなかつたものである。そして野村が本件において被告会社の株式売買を行つた大半は、表面上京浜倉庫(株)及び日本ペツトフード(株)の委託に基づくもので、被告会社の自社株売買に関与したのは比較的短期間であつて、幹事証券会社の日興、大和の立場とはおのずから異なつていたものであり、これらの事実を併せると、所論のような事情をもつて被告人後藤が本件変動操作に加担しなかつたことの理由とすることはできない。その他弁護人が本件において変動操作の共謀がなかつたとして主張するところを検討しても、いずれも前認定を左右しない。

以上のとおりであつて、被告人らの本件株式の売買は、被告会社において増資による三〇億円の資金を調達するため、変動操作をして株価を二八〇円台まで高騰させ公募価格を二〇〇円にする目的で行われたものであり、被告人らの間に右変動操作について判示のとおり順次共謀が成立したことも明らかである。

二  ところで、弁護人は、右被告人らの株式の売買は証券取引法一二五条二項一号後段の変動操作に該当しないと主張する。

そこで検討すると、関係証拠によれば、次の各事実が認められる。すなわち、本件一連の株式の売買は、被告人らが被告会社において増資により三〇億円の資金を調達するため、株価を二八〇円台にまで高騰させ公募価格を二〇〇円にすることを企図して行つたものであり、そのため被告人栗崎及び同間邉は買付資金として当初一億五〇〇〇万円、その後三億円を準備すると共に、関連会社からも資金を導入するため、後記のとおり京浜倉庫(株)に合計二〇〇万株、子会社の日本ペツトフード(株)に約三〇万株をその資金によつて保有させることとし、また売買数量、値段の限度、委託注文の執行等具体的な買い付けの方法については日興横浜支店の被告人高田、大和横浜支店の同寺島、及び野村原町田支店の同後藤にそれぞれ一任して行わせたものである。本件株式売買の行われた東京証券取引所売買立会場第一部は、本件当時、U字型の取引ポストが一三設けられ、各銘柄はこれらポストに業種別に大別されてそれぞれの取引をする場所が定められていたが、右各ポストには取引所からそれぞれ所属ポストを指定された証券会社間の株式を媒介する才取会員が配置され、同才取会員は場立ちからの注文を受け、これを銘柄ごとに板に記載して売買取引の媒介を行つていたものであり、顧客から証券会社に委託された注文は、証券会社から直通電話又はオンラインによつて場立ちに伝えられ、場立ちから更に才取会員に取りつがれて板に記入され、この板の上で価格優先、時間優先等の競争売買の原理に従つてつけ合わせが行われ、その結果売り買いの数量、価格が合致し、売買が成立すると、才取会員から約定値段が取引所の市場係員に伝達され、取引所の確認を得てボールド(公定相場表示板)に掲示されて公表され、他方成立した売買内容は才取会員によつて売買申告照会書(以下「場帳」という。)に記入されていたものであるが、本件は前記のとおり被告人間邉から株式売買の委任を受けた被告人高田は日興横浜支店において同船越と相謀り昭和四七年七月一七日から、同被告人寺島は大和横浜支店において同栗田と相謀り同年八月一六日から、同被告人後藤は野村原町田支店において同年七月二七日から、それぞれ必要に応じて場立ちを通じて板に記載された未執行の売買注文の内訳(以下「板の状況」という。)ないしザラバの気配をみながら、前記被告会社あるいは同社の系列会社の資金で、被告会社の株式を買い上げ、これを特定の金融機関ないし事業法人等に推奨して高値ではめ込む等し、同月一六日から権利落の前日である同年九月二六日までの間、別表第四株価及び出来高推移表のとおり、株価を一七九円から二五六円まで高騰させたものであつて、その買付内容は概ね検察官冒頭陳述書別表一の(一)ないし(三)、売付内容は同別表二の(一)ないし(三)記載のとおりであるが、所論にかんがみ、右のうち主な買付の経緯及び内容を具体的にみると、(1)被告人間邉は、増資発表当日の七月二六日夜又は翌二七日早朝、挨拶かたがた株価つり上げのためかねて被告会社が行つていた自社株買いの発注委託を求めてきた被告人後藤に対し、被告会社従業員である伊藤康夫、同大場正の名義でとりあえず二〇万株の買い注文を委託し、あわせてその注文執行によりできるだけ株価をつり上げるように依頼し、これを受けた被告人後藤は、七月二七日に右注文を執行するにあたり、当日寄り付き値が前日の増資発表を好感して前日比七円高の一八四円で始まつたのを受けて、前場において九〇円の指値で一〇万株の買い注文を入れ、一八〇円から一九〇円までの売り注文を一気に買いさらつてしまい、その後下り気味の場の気配をみて、一八五円の指値で五万株の買い注文を入れ、大引け前から右指値を成り行きに変更すると共に、さらに大引け成行買いで五万株の注文を入れ、その結果終り値が一九〇円になつたこと、さらに被告人間邉は、市場に出てくる浮動株を買いさらつて株価のつり上げを図るため、京浜倉庫(株)の清水常務に資金援助を求め、株価工作のため当面二〇〇万株位の被告会社の株式を京浜倉庫(株)の資金で買い上げてもらうことの了解をとり、株式売買が幹事証券会社に集中するのを避けるため、野村原町田支店に執行を委託することとし、被告人後藤は、そのつど具体的な買付株数の委託を受けて市場に発注する方法により、七月三一日から八月一六日までの間において、京浜倉庫(株)、伊藤康夫、浜口正明、三国真一郎、山口茂、松永久雄、遠藤博、森田実らの名義で合計二一二万株を買い付け、その結果として株価も二一四円位まで上昇した。右期間における被告人後藤の主な取引についてみると、七月三一日は、寄り付き値が前日終値と同値の一八七円で始まつたのを受けて、いずれも京浜倉庫(株)名義により、午前九時〇七分に一八八円の指値で一〇万株の買い注文を入れ、一〇時四四分に一八八円で九〇〇〇株を買つたのち、指値を一九五円に変更して残りの九万一〇〇〇株を一九〇円から一九五円までの値段で買い付け、株価は寄り付きから一気に八円の上昇をみたが、その後は場の状況をみながら、一九三円の指値で二〇万株の買い注文を出し、後場でその一部を一九七円に指値を変更し、ほかに一九五円の指値による一〇万株の買い注文を入れるなどし、合計三二万二〇〇〇株を買い付け、当日終値は一九七円であつた。翌八月一日は、寄り付き前に京浜倉庫(株)名義で一七万八〇〇〇株を前日終値より三円高い一九八円の指値で買い注文を出し、一〇万株を一九八円で買い付けたのち、残株について指値を一九九円に変更して右値段で七万八〇〇〇株を買い付け、これとは別に濱口正明名義で一〇万株を二〇〇円の指値買いの注文を出し、その後右注文を成行買いに変更し、二〇〇円から二〇二円までの値段で一〇万株を買い付け、後場においては、場の気配をみて午後一時四五分濱口正明名義で一〇万株の成行買い注文を出し、更に同人名義で一〇万株を二〇二円の指値買いの注文を出し、間もなく、その指値を成行に変更し、これらの注文により二〇三円までの売り物を買い付けたのち、場に売り物が少なくなつたのをみて午後二時長浜隆志名義で二〇八円の買い指値により一〇万株の買い注文を入れ、その後指値を成行に変更し、二〇五円から二一五円までの値段でその全部を買い付け、この時点で被告会社株の当日株価は、前日終値に比べて二〇円高をつけたが、その後被告人後藤が追加注文をしなかつたところ、大引けにかけて僅かの売り物で相場が急落し、終値は二〇〇円にとどまつた。八月二日には被告人後藤は、寄り付き前から三国真一郎の名義で前日終値より一〇円高い二一〇円の指値で一〇万株の買い注文を入れ、その結果寄り付きが二一〇円で始まつたのち、同被告人は、右高値を支えるべく右三国名義でさらに一〇万株につき、二一〇円の指値による買い注文を出し、後場においては場の状況をみて、右三国名義で二〇八円の買い指値により各五万株の買い注文を出し、いずれも二〇八円で買い付け、これが当日終値となつている。八月三日は、後場になつて相場が強いと判断した被告人後藤は、山口茂名義で一〇万株につき二一〇円の指値買い注文を出したのち、同人名義で二万株の成行買い注文を出し、二一〇円で五万一〇〇〇株、二一三円で二万株を買い付けた結果、終値は前日比五円高の二一三円となつた。その後被告会社は急騰の反動で売り物に押されるようになり、被告人後藤は引きつづき八月一六日まで買い注文を出したが、従前の高値を下支えする程度に終つた。(2)他方、被告人間邉は、被告会社の資金により自社株を市場において買い付ける方法により株価をつり上げるべく、日興の被告人高田及び大和の被告人寺島らに順次株式買付けの発注をし、これを受けて、被告人高田は、七月二七日午後のザラバで鎌倉興光の名義を用い、一八七円の指値で五万株の買い注文を出し、そのうち三〇〇〇株を買い付けたのを手始めに、八月一日には、前日終値が一九七円であつたものが、当日寄り付き一九八円と堅調に始まつたのを受けて、後場のザラバで安藤亮士名義により二〇〇円の指値で八万株の買い注文を出し、うち五〇〇〇株を二〇〇円で買い付け、翌二日は、寄り付き前から安藤亮士名義により前日終値より一〇円高い二一〇円の指値で四万株の買い注文を出し、結局二一〇円で三万株を買い付け(被告人高田は同日の取引につき、成行三万株の買い注文であつて二一〇円の指値注文ではないと供述するが、押収にかかる売買注文伝票―符一〇〇―によれば当初の発注は指値注文と認められる。)、さらに八月三日は、寄り付き値が前日比一円安の二〇七円であつたのに、午前九時二〇分前原孝則の名義で二一〇円の指値で三万株の買い注文を出し、その全部を二一〇円で買い付け、八月五日は、大引け成行注文で三万株を発注し、結局終値が前日比六円高の二一七円に終つている。このようにして、被告人高田は七月二七日から八月五日までの間、合計二五万株余りを買い付け、さらに八月一六日から一九日までに合計二四万株余りを買つたが、そのころ、被告人高田は、本社株式部から、横浜支店における被告会社株式の売買方法に関し、買い方が不自然であるとか、買いが横浜支店に集中し過ぎているとクレームがつけられ、被告会社の株式に関する板の状況はもちろんバイカイの気配すら教えてくれなくなつたために、同支店からの買い注文を山種証券(株)横浜支店の五十嵐支店長や遠山証券(株)の斉藤賢弘に依頼してこれら証券会社から出してもらうこと(いわゆる地場受けの方法)とした。(3)被告人間邉は、八月下旬ころになつて、従前被告会社が如春会に貸し付ける形式で自社株の買い付け資金としていた一億五〇〇〇万円を殆ど使い切つてしまい、その反面、累積した取得株式のはめ込み先もなかなか見つからないところから、さらに株価をつり上げるためには、如春会への貸付枠を増額するほかないと考え、被告人栗崎と相談のうえ、如春会への貸付枠を倍額の三億円として自社株取得の資金としたほか、被告会社の子会社の日本ペツトフード(株)にも資金援助を求め、その資金で市場から被告会社の株式を三〇万株買い取つてもらうことの了解を得て、その注文執行を被告人後藤に依頼した。被告人後藤は、これを受けて八月二八日には、川北登名義で寄り付き前から前日終値と同種の二一九円の指値で一〇万株の買い注文を入れ、前場に二一九円で五万六〇〇〇株を買い付けたのち、後場になつて、残りを二二四円の指値に変更し、二二〇円から二二四円までの値段で買い付け、さらに武井昭長名義により二二四円の指値で一〇万株の買い注文を出し、二二四円で六万株を買い付けたほか、翌八月二九日には武井昭長名義で四万株を二二四円で買い付け、八月三〇日には弓削政美で一〇万株を二二八円で買い付けている。更に、九月一四日から被告人後藤は、被告会社の自社株七〇万株の買付委託を受けて、これを執行したが、九月一四日に、寄り付き前から前日終値比一円高の二四六円で三万株の買い指値注文を入れ、売り物が少ないとみるや、午前九時三三分に一〇万株の成行買い注文を入れ、二四六円から二五三円までの売り物を買いさらい、さらに午前一〇時に五万株の成行買い注文を出して二五四円までの売り物を買い、更に前場の終了間際に五万株の成行買い注文を出して二五五円の売り物を買い付け、その後売り物に押されて値を下げてくるや、後場で三万株の成行買い、五万株の二五四円指値買い、一〇万株の二五四円指値買いの各注文を入れて買い支え、大引け間際に五万株の成行買い注文を入れて二五五円の終値を実現したほか、九月一六日から同月二〇日にかけて被告会社の委託により三三万六〇〇〇株を買い付けている。(4)被告人高田は、八月二二日から二六日までの間に日興の買い注文による六万三〇〇〇株の買い付けと並行して、山種証券(株)を通じて一二万九〇〇〇株を、遠山証券(株)を通じて九〇〇〇株を買い付け、更に、八月三一日から九月二日までに遠山証券(株)を通じて三九万四〇〇〇株を買い付け、九月七日から一三日までに日興の買い注文による一六万二〇〇〇株の買い付けと並行して遠山証券(株)を通じて二五万八〇〇〇株の買い付けを行つたほか、九月二一日以降権利落の前日である九月二六日までに、主として遠山証券(株)を通じて約二〇万株の買い付けを行つている。このうちの主な売買をみると、八月二二日には、当日寄り付き値が前日終値と同じ二一五円で始まつたのを受けて、被告人高田は、午前九時二〇分に安藤亮士の名義により、二一六円、二一七円及び二一八円の指値で各一万株の買い注文を出し、そのうち二一六円で三〇〇〇株、二一七円で六〇〇〇株、二一八円で一万株を買い付けたほか、後場には山種証券(株)から横田修名義により大引け直前に二二〇円の指値で一万株及び大引け成行きで一万株の各買い注文を出し、二二〇円で一万株及び二二五円で一万株を買い付け、結局当日終値が前日比一〇円高となつたものであり、また八月三一日は、当日寄り付き値が前日終値より一円高の二三〇円で始まつたのを受けて、前場は後記大和からの大量買いもあつて、終値二三四円をつけていたが、後場においても高値で取引が行われている状況にあり、被告人高田は、市場に出ている売り物が少ない状況であると判断し、遠山証券(株)を通じて一四時二二分前原孝則名義で七万株の成行買い注文を出し、そのうち四万八〇〇〇株について二四〇円ないし二四五円で買い付けたが、最後の四〇〇〇株は当日高値でかつ終値と同じ値段であつた。また九月一日は、寄り付き値は前日終値に比べて五円安の二四〇円で始まつたが、前場から後場にかけて被告会社からの委託を受けた大和から一三万株にのぼる買い注文が出されて株価は強含みに推移していたところ、被告人高田は一三時一五分ころ遠山証券(株)を通じて横田修名義で二四万三〇〇〇株にのぼる大量の成行買い注文を出し、その結果大引け直前に至り二五一円という高値で一万株を買い付け、当日の新高値で引けている。なお、九月二日は、前日の急騰のあとを受けて、当然弱含みに始まることが予想されたところから、被告人高田は、日興から午前八時に横田修名義で四万四〇〇〇株を二四八円の指値売りの、安藤亮士名義で二万九〇〇〇株を二四九円の指値売りの各注文を出す一方、遠山証券(株)から午前八時四六分高橋清名義で一〇万株の成行買い注文を出させ、二四八円で五万株(そのうち、四万四〇〇〇株が横田修名義の売り注文と対当)、二四九円で五万株(うち二万九〇〇〇株が安藤亮士名義の売り注文と対当)を買い付けさせ、九月九日は、前日終値が二四六円だつたのを受けて寄り付き前の午前八時五四分に遠山証券(株)から河合淳治名義で三〇万株の成行買い注文を出させる一方、日興から午前一〇時三〇分毛利裕彦名義で三万一〇〇〇株を二五〇円の指値で売りに出し、右買い注文と対当させたほか、右河合名義の買い注文により二四五円から二五〇円までの売り一四万一〇〇〇株を買いさらい、結局終値は二五〇円となつている。また、九月二二日には、前日終値が二五五円であつたのを受けて、日興から寄り付き前の午前八時五〇分に大場正名義で八万株を二五五円の指値買いの注文を出し(日興の買伝票―符89―の発注日9/21とあるのは9/22の誤記と認められる)、九時一三分から三三分までに三万二〇〇〇株の成約をみたのち、指値を二六〇円に変更し、九時四六分に二五八円で一〇〇〇株、二六〇円で四万七〇〇〇株を買い付け、また、午前九時五〇分大場正名義で五万株につき二五七円の指値買い注文を出し、二五七円で二〇〇〇株を買い付けたのち、指値を二五九円に変更し、二万五〇〇〇株を二五九円で買い付けている。他方遠山証券(株)から水上鴻志名義で六万株につき計いによる買い注文を出し、日興の右買い注文より売り注文が少なくなつている状態で二五九円から二六五円までの売り注文を買い付けている。さらに権利落の前日である九月二六日には京浜倉庫(株)の依頼により山口祥三名義で二五五円の指値売り一二万株、二五六円の指値売り四万株の売り注文を出す一方、後場に日興から大場正名義で五万株につき二五三円の指値買いを入れて、一〇〇〇株を買つたほか、遠山証券(株)から午後一時五七分水上鴻志名義により二五五円の指値買いで一七万株の注文を出し、二五五円で四万株を買い付けたのち、指値を二五六円に変更し、二五六円で一〇万三〇〇〇株を買い付け、当日終値が二五六円で終つている。(5)次に大和は、八月一六日から被告会社の注文を受けて買い始めたものであるが、その方法は同月一六日から一九日までの間は、いずれも前場で二一四円の買い指値により、連日三万株ないし二万株を二一三円ないし二一四円で買い付けたが、右は、前記京浜倉庫(株)の資金により野村が七月末から八月上旬にかけて大量の被告会社株式を買い上げたことにより、被告会社の株式が一九〇円台から二一七円まで急騰したあとを受けて、株価が弱含みの時期であり、したがつて、右の買い方は株価の下落を防ぐための買い支え程度に過ぎなかつたが、八月二三日に至り、前日被告会社の株価が二一五円から二二五円まで一〇円高騰したあとを受けて、当日は小安く始まつたことから、被告人寺島は、前場の寄り付き直後に、いずれも伊藤康夫の名義で二二二円の指値で二万株、二二三円の指値で一万株、二二四円の指値で二万株の各買い注文を入れ、二二二円で一万二〇〇〇株、二二三円で一万株、二二四円で二万株を買い付け、このようにして八月二六日までに被告会社の買い注文により二〇万二〇〇〇株を買い付けていた。八月二九日に至り、株価は、前日六円高騰して二二五円で引けたあとを受けて、被告人寺島は、被告人間邉から月末の株価上昇作戦を依頼され、前場寄り付き直後の午前九時一五分島田稔の名義で一万二〇〇〇株につき二二四円の買い指値の注文を入れ、二二四円で一〇〇〇株を買い付けたのを手始めに、引き続き小西和彦の名義で三万株を二二五円の買い指値で、荒川勇二名義で一万五〇〇〇株を二二五円の買い指値でそれぞれ発注し、二二五円で合計四万三〇〇〇株を買い付け、さらに江藤寛治名義で一万五〇〇〇株を二二七円の買い指値で発注し、その数分後大場正の名義で三万株を二二八円の買い指値で発注し、それぞれ指値どおりの値段で合計四万五〇〇〇株を買い付けたうえ、午前九時四二分には早川威名義で六〇〇〇株の成行買い注文を出し、二二九円で買い付け、午前九時五五分には加藤弘名義で一万二〇〇〇株の成行買い注文を出し、二二九円で買い付け、後場においても午後二時二六分に森芳正名義により二二九円の買い指値で二万株の、飯塚良雄名義により二三〇円の買い指値で三万株のそれぞれ買い注文を出し、二二九円で七〇〇〇株、二三〇円で三〇〇〇株を買い付けたが、この日の相場は野村原町田支店が武井昭長名義で買い付けた四万株の取引と相まつて被告会社関係者の買付分が当日出来高の約四割を占めているのであり、その結果、当日の終値は前日比四円高の二二九円まで上昇している。また、被告人寺島は八月三〇日にも被告会社の株式について一四万四〇〇〇株にのぼる買い注文を出し、そのうち一二万八〇〇〇株を買い付け、翌八月三一日には、寄り付き値が、前日終値に比べて一円高の二三〇円で始まつたのを受けて、午前九時三五分加藤弘名義により四万五〇〇〇株を二三六円の買い指値で発注し、二三四円で一万株、二三五円で三万株、二三六円で五〇〇〇株を買い付け、午前一〇時二分には森芳正名義により三万株を二三七円の買い指値で発注し、二三五円で三〇〇〇株、二三六円で四〇〇〇株、二三七円で二万三〇〇〇株をそれぞれ買い付け、後場においては、飯塚良雄名義により五万株を二三六円の買い指値により発注したほか、大場正名義により二万株を二三七円の買い指値で、小西和彦名義により一万株を二三八円の買い指値で、江藤寛治名義により一万株を二三九円の買い指値で、早川威名義により五〇〇〇株を二四〇円の買い指値で、江藤寛治名義により一万五〇〇〇株を二四三円の買い指値で、順次発注し、最高二四三円までの買い付けをし、結局当日合計一六万二〇〇〇株を買い付けているが、この日は前記被告人高田による遠山証券(株)を通じての取引と相まつて終値は二四五円まで上昇した。九月一日は、寄り付き値が二四〇円と前日終値比五円安で始まつたが、被告人寺島は、午前九時四分河合鷹夫名義により五万株の成行買い注文を、九時二〇分には高橋清名義により二四六円の指値で三万株の買い注文を、一〇時九分には虻川謙一郎名義により二四五円の指値で二万株の買い注文を入れるなどして合計一〇万八〇〇〇株を買い付け、九月二日には、内山隆夫の名義により二四五円で四〇〇〇株、二四六円で三万三〇〇〇株を買い付け、九月四日及び九月五日の両日も二四五円で大量の買い付けをして下値支えと認められる取引をしており、九月六日に至ると、寄り付き前に河合鷹夫名義により、二四五円の指値で八万株の買い注文を出したあと、午前一〇時一六分虻川謙一郎名義により一万三〇〇〇株の成行買い注文を出し、二四七円から二四九円の値段で全株を買い付けている。ところで、右のとおり買い付けられた被告会社の株式は、被告会社の手によつてこれを関連金融機関、事業法人等にはめ込むだけではなく、日興、大和の各横浜支店、野村原町田支店を通しはめ込みを図り、浮動株を市場から吸い上げると共に、新たな買付資金の回収を図ることが予定されていたものであつて、被告人高田、同寺島、同後藤は、被告人間邉からの委託によつて買い上げた被告会社の株式について、直接又は各支店を通じて関連金融機関、事業法人等に対してはめ込みを図つていたが、被告会社の株式がローカル銘柄で一般に十分知られていなかつたうえ、同社の製品の取引先が畜産、農業の関係者に限定されていたこと等からはめ込みが難航し、そのため、店頭客に買取の申込みを勧誘して売却し新たな買付資金の回収まで行つていたものであり、日興横浜支店(遠山証券(株)本店取扱分を含む。)、大和横浜支店、野村原町田支店の各売り付け状況(はめ込みを含む)は別表第五の(一)ないし(三)のとおりであるが、結局はめ込みが思うにまかせず、被告会社には自社株が次第に累積し、加えて、京浜倉庫(株)の清水常務からの申入れにより、前記京浜倉庫(株)の資金で野村原町田支店を通じて買い付けた被告会社の株式合計二一二万株のうち一〇〇万株を昭和四七年九月八日までに買い取ることを要求されたために、同時期の自社株の保有数は二〇三万九四〇〇株に達した。そこで被告人栗崎、同間邉は、同年八月二九日付で自社株取得の資金枠を三億円に増額し、被告人高田、同寺島、同後藤に対し自社株のはめ込みを要請すると共に、直接住友信託銀行横浜支店、大和銀行横浜支店等に対し、保有自社株の買い取り方を依頼し、被告会社の各工場長らに対しても各工場所在地の関連金融機関、事業法人等に自社株のはめ込みを指示し、その結果株主割当日である同年九月三〇日現在における自社株の保有数は八六万二四〇〇株に減少した。被告会社による取得株式のはめ込状況は別表第六のとおりである。以上のような、被告人高田、同寺島、同後藤ら各証券会社担当者において具体的に市場において行つた取引は、被告会社の株価を権利落までにできれば二八〇円位まで高騰させるため、被告会社及びその関連会社の資金により、市場に出て浮動株を継続的かつ大量に買い付けたばかりでなく、その個々の買付方法をみても前記のとおり、(1)寄り付き前から前日終値より高い指値で買い注文を出す、(2)ザラバの気配をみて直近値段より相当高い指値買いの大量注文を出し、指値以下の売り注文を買いさらう、(3)指値を一円刻みに高くした買い注文を同時刻にまとめて発注する、(4)ザラバの気配をみて買い注文の残りの指値を高く変更し、又は成り行きに変更して買い上る、(5)被告人高田において、被告会社の委託に基づく売買注文の執行を遠山証券(株)との間において行つた前記仮装売買等の買付方法をとつているものであり、これらの買付方法は、それ自体委託者の利益のためにできるだけ安く買い付けるという方法ではなく、株価の高騰を意図した買付方法であり、相場の変動を生ずべき取引にあたることは明らかである。また、ザラバで値が下り出した場合に前日の終値あるいはそれを若干下回る程度の指値による買い注文をまとめて出して安値の売り注文を買い付けたり、寄り付き前から前日の終値あるいはそれを若干下回る程度の買い注文をまとめて出して安値の売り注文を買い付けた取引が相当数認められるが、これらの取引もその数日前から前記(1)ないし(5)の取引により被告会社の株価が人為的に引き上げられた結果、その反動で株価が下降気味となつたものを買い支えるための取引であり、それが被告会社の資金による自社株売買という方法によるもので実需の裏付けがないことを併せ考えると、客観的にみて市場に出される安値の売り注文を買いさらつて相場の高騰に結びつけるための買い支えというべく、従つてこれらの買付方法もその前後にした被告人らの買い付けと併せて観察すれば、相場の変動を生ずべき取引にあたることは明らかである。以上のほか、後記被告人らの安定操作違反の事実、被告会社では本件時価発行公募による一二億円の増資により、プレミアムを一八億七五〇〇万円とし、予定どおり合計三〇億円余の資金を調達したこと、本件後の被告会社の株式の取引状況、株価の推移状況等を併せると、被告人らの被告会社において本件増資により三〇億円の資金を調達するため株価を二八〇円台に高騰させ、公募価格を二〇〇円にすることを企図し、市場の実勢や売買取引の状況に関する一般投資家らの判断を誤らせることになることを十分認識しながら、本件株式の売買を行つたもので、右被告人らの行為のうち、少なくとも別表第一の(一)、(二)記載の各買付は、市場原理に反して人為的に株価を高騰させる意思のもとに、一般投資家らの市場における被告会社株式の売買取引を誘引する目的をもつて、相場を変動させる一連の売買取引を行つたものとして証券取引法一二五条二項一号後段所定の変動操作に該当することは明らかである。

なお弁護人は、右条項のうち、「相場を変動させるべき一連の売買取引」に関し種々主張し、本件株式の売買が変動操作にあたらないと争うので、説明を加えることとする。

まず弁護人は、右「一連」の売買取引とは、直前の相場よりもその相場を高騰させるような買い付けが継続して順次三回以上行われる場合の取引をいい、従つて直前の相場のない寄付発注や終値条件で発注した場合などは右「一連」の売買取引にはあたらないと主張する。しかしながら、右「一連」の売買取引については既に述べたとおりであつて、継続した誘引目的の発現と認められる複数の取引を意味するものであるが、右の継続性は、所論のように限定的に解すべき根拠はなく、取引を行う者において、一定の目的達成のために継続的に行つており、しかもそれが社会通念に照らして継続性を認めうるものである限り、個々の取引と取引との間に第三者の取引が介在しても、また日を異にする取引相互の間においても右の継続性を認めることができるのであつて、この見地からみると、被告人高田、同寺島、同後藤が被告人間邉らと共謀のうえ行つた本件の被告会社株式の買付取引は、全体として一連の取引と認めることができる。

次に弁護人は、本件株式売買のうち、成約値段が直前の約定値段又は前日終値以下のものは、株価を上昇させるものではないから、変動操作に該当せず、また板に記載された売り注文の指値より低価の買い指値の注文は、株価の上昇目的にそわないもので気配相場を下落させるものであるから、右取引も変動操作に該当しない等るる主張する。

しかしながら、株価の高騰を図るために一連の売買取引を行う場合において、単純に株価の上昇となる発注のみを行うことは極めて不自然であり、被告人らも検察官に対する供述調書において述べているように監督機関等に怪しまれないようにするため、被告人らは本件取引をできるだけ自然に株価が上昇したかのように見せかけるため、ある時は買い出動を手控えたり、手持ちの株を売つたりすることにより株価が自然に高低をくり返しながら上昇して行くように工作していたものであり、したがつて被告人らの本件売買取引は、前記目的のもとになされた一連のものであるのみならず、本件のように被告会社及びその関連会社の資金を動員して市場において被告会社の株式を大量に買い付け、いわゆる浮動株を極力買いさらう方法をとる場合においては、市場に出る安い売り物を買いさらうこともその後における株価の上昇に結びつくものであり、本件増資発表後の株式取引をつぶさに検討すると被告会社の大量買いの結果、売り物が少なくなつて被告人らが更にこれを買い付けることにより、その後の株価の上昇を効率的に行つている事実が明らかに看取できるから、所論の買付方法は、それじたいとしては高騰目的と合致する買付といえないもののようであるが、その前後の取引と併せて観察すると、前記のとおり株価の買い支えを主目的とするものであり、これも相場を変動させるべき取引にあたるものというべきである。

その他弁護人が本件変動操作について主張するところをすべて検討しても、所論はいずれも理由がない。

第四安定操作違反について。

一  弁護人は、被告人らの別表第二記載の株式の売買は安定株主工作として行つたものであり、被告人らにおいて安定操作違反の共謀をしたことはない旨主張し、被告人らも当公判廷においてこれに沿う供述をしている。

そこで検討すると、(証拠略)によれば、被告人栗崎及び同間邉は、前記のとおり権利落まで努力してつり上げた株価が公募価格算定期間中に安い売り物が出るなどして値崩れしたのではそれまでの変動操作の苦労が水の泡となると考え、右期間中その値下りを防ぎ、株価を二二〇円位に維持することを企図し、被告会社の手持資金を動員して買い支えることを話合い、判示認定のとおり被告人間邉において被告人高田、同寺島に対し、それぞれ各別に引き続き被告会社の株式を買い付けて株価を維持してくれるよう依頼したこと、これに対し被告人高田は、従前の経緯から右依頼を承諾したが、権利落後の株価を人為的に操作するにしても、本社株式部の警戒が厳しいためこれまでのように被告会社の資金でその社員名義を用いて買い付けることは危険であると判断し、京浜倉庫(株)の清水常務にすすめ、同社の子会社である京浜埠頭(株)の資金で被告会社の株式二五万株を買い付けるが、その買付方法は一切を被告人高田に任せるとの約束をとりつけ、被告人船越に右の経過を報告して引き続き被告会社株式を買い支えることについて同被告人の了解を得たこと、そして、被告人高田は、右京浜埠頭(株)の資金により山口一美名義で同年九月二七日から同年一〇月一七日までの間、後記のとおり被告会社株式二五万株を買い付けたこと、他方、被告人栗崎及び同間邉は、同年一〇月一一日の公募価格算定期間の開始が近付くにつれ、より一層株価の安定を図るため、大和にも買い支えを依頼しようと企て、同年一〇月初旬ころ、被告人間邉において同寺島に対し、「日興にも頼んでいるのだが、日興だけでは目立つので、ぼつぼつ大和でも買いを出していつてもらいたい。」などといい、引き続き被告会社の資金で自社株を買い付け、株価を維持して欲しい旨依頼したところ、被告人寺島も右被告人間邉からの買い支えの依頼を承諾し、同年一〇月一一日から同月二一日までの間、従来どおり被告会社の資金により、同社従業員の恒吉利信及び飯塚良雄名義で合計一五万六〇〇〇株を買い付けたが、同月二〇日ころ東京証券取引所売買審査室に買付名義人が被告会社の社員であることが発覚したため、以後大和からの買付発注は危険であると考え、被告人間邉に対しこれ以上協力できない旨伝えたものの、同被告人からここで見捨てられては困るなどといわれ、そのまま手を切れば株価の維持ができなくなることが当然予想されたことから、地元の被告会社と取引の全くなかつた日本勧業角丸証券(株)(以下「勧業角丸」という。)横浜支店、山吉証券(株)(以下「山吉」という。)、東武証券(株)(以下「東武」という。)を紹介すると共に、勧業角丸の米山横浜支店長、山吉の馬島常務及び東武の田中総務部長にもそれぞれ事情を話して注文の受託を承諾させ、以後同年一一月二日から同月七日までの間、被告会社従業員でない第三者の名義により、右各証券会社において買い付けが行われるに至つたこと、なお、その後被告人間邉は、右各証券会社へ委託するのとは別に被告会社独自でも買い支えをした方がよいと考え、被告人栗崎と協議のうえ、京浜倉庫(株)に依頼して第一証券(株)を紹介してもらい、同年一〇月二三日から同年一一月八日までの間、前記清水常務及び京浜倉庫(株)の平野雅久経理部長を介して第一証券(株)に委託して買い支えを行つたことが認められる。そして以上の各事実のほか、本件株式の取引状況、株価の推移状況、ことに本件株式の取引により前記権利落当日の終値二二一円を同年一一月八日には二三四円で終わらせ、結局前叙のとおり当初もくろんだ公募価格二〇〇円の目的を達成し、三〇億円余の資金調達を果したこと等を総合すると、被告人らの本件株式売買は、判示認定のとおり、変動操作により高騰した株価を、権利落後にも人為的に操作してこれを維持するために敢行されたものであつて、被告人らの間に順次安定操作違反について共謀が成立したものと認めるに十分である。右認定に反する前記被告人らの公判供述は採用の限りでない。なお、弁護人は、本件株式の売買は被告会社の株式を安定株主に保有させるために行われたものであつて、安定操作を目的としたものではなく、実際に買い付けにかかる株式の大部分が安定株主にはめ込まれていると主張するが、関係証拠によれば、右安定株主に対するはめ込みなるものは、前叙変動操作の場合と同様に専ら新たな安定操作のための買付資金を回収するために行われたことが明らかであつて、所論は採用できない。なお、前記公募価格算定期間後にも安定株主と目される金融機関、事業法人等に相当数はめ込まれているが、右の事実が前認定を左右するものでないことは多言を要しない。

二  ところで弁護人は、右被告人らの株式の買付は証券取引法一二五条三項の安定操作違反には該当しないと主張する。

しかしながら、関係証拠によれば、被告人らは、前認定のとおり被告会社において本件増資により三〇億円の資金を調達するための変動操作により株価を二五〇円台にまでつり上げることに成功し、右株価は権利落後に二二〇円台にまで下がつたものの、この株価を公募価格算定期間終了まで何とかもちこたえれば値引率(デイスカウント率)を操作することによつて所期の目的である公募価格を二〇〇円に設定することができるものと判断し、右公募価格算定期間終了までの間、右株価の下落を防ぎ又はこれを遅らせる目的をもつて、一連の株式売買をなし、昭和四七年一〇月一一日から同年一一月九日までの公募価格算定期間内における株価を二二〇円ないし二三四円の範囲で安定させたものであり、その買付の内容は、検察官冒頭陳述書別表四の(一)ないし(三)記載のとおりであるが、その買付の経緯を具体的にみると、被告人高田は、同年九月二七日の権利落株価が理論値二一五円を上回る二二一円となつたことから、京浜埠頭(株)からの二五万株買付委託により山口一美名義で二二一円の指値で一〇万株の買い注文を入れ、同値で八〇〇〇株を買い付けたのを手始めに、同月二九日には二二一円で六〇〇〇株、同月三〇日にも二二一円で九〇〇〇株を買い付けた後、別表第二記載のとおり一〇月二日から同月一七日までの間、同表記載のとおり二二一円又は二二〇円の指値により二二万七〇〇〇株を買い付けたものであり、他方そのころ、被告人間邉から前記のとおり被告会社の資金で株価の買い支えを依頼された被告人寺島は、同月一一日の前場で恒吉利信名義により二二一円の指値により四万三〇〇〇株の買い注文を出し、同日から同月一三日にかけていずれも二二一円で全株を買い付け、同月一八日には、飯塚良雄名義で寄り付き前に前日終値と同値の二二〇円で四万六〇〇〇株の買い注文を出し、前場で全株を買い付けたほか、同月一九日から同月二一日まで連日飯塚良雄名義で二二〇円の指値により一一万三〇〇〇株を買い付けたが、同月二〇日ころ、本社市場部から右飯塚良雄が被告会社の従業員ではないかと指摘され、以後の買い支えを大和から発注せず、前記のとおり勧業角丸、山吉及び東武に委託することとなり、このうち勧業角丸については、被告人間邉が京浜倉庫(株)の平野経理部長に依頼し、同社から発注をさせる方法により、又山吉と東武分については被告人間邉から買付委託を受けた被告人寺島において右各証券会社に依頼して発注させる方法により、同年一〇月二八日から同年一一月八日までの間別表第二記載のとおりほとんど連日のように買い付け注文を出し、二二六円ないし二三三円の値段で勧業角丸を通じて八万五〇〇〇株、山吉を通じて一〇万四〇〇〇株、東武の委託による水戸証券(株)を通じて三万株を、それぞれ買い付けたこと、他方被告人間邉は、日興、大和による買い支えとは別に、被告会社独自の立場でも買い支えをしようと企て、被告人栗崎の了解を得て、同年一〇月下旬ころ、京浜倉庫(株)の清水常務に事情を話し、被告会社において資金を用意するから、知り合いの証券会社を紹介して欲しいと依頼し、同人の知り合いの第一証券(株)を使うこととし、恒吉利信財務課長から京浜倉庫(株)の平野経理部長等を通じて田代喬の名義により第一証券(株)に買い付け発注させ、同月二三日から同月二七日まで連日二二〇円ないし二二五円で合計一六万二〇〇〇株を買い付け、更に同年一一月八日には石井義雄名義で二三三円の指値により二三二円で一万株、二三三円で一万株をそれぞれ買い付けたこと、その結果、前叙公募価格算定期間内における平均価格算定方法によつて算定された平均価格が二三〇・三五円となつたので、この金額から配当差四円を控除し値引率を一一・六パーセントとすることにより、公募価格を予定の二〇〇円とし、所期の目的を達成したこと等が認められる。右によれば、被告人らの判示第二の株式買付行為は市場原理に反して人為的に株価を操作する意思のもとに株価を安定させる目的をもつて、市場における一連の売買取引を行つたもの、すなわち、証券取引法一二五条三項所定の「政令で定めるところに違反して、有価証券の相場を安定する目的を以て、有価証券市場における一連の売買取引」に該当することはいうまでもない。

ところで弁護人は、安定操作違反というためには、維持すべき基準値段よりも安い売り注文が場にでているため相場が下落する状況にある場合において、基準値段と同じ指値注文を出して買い支えることが必要であり、かかる買い付けが継続して少なくとも三回行われることが必要であると主張し、本件取引のうち寄り付きにおいて前日終値と同じ指値で買い注文を入れることや、ザラバにおける買い注文が板に記載されたうえで後に成約となつた取引、ないしザラバにおける即時成約の場合においても維持すべき基準値段による指値買い注文より安い注文がないときは安定操作とはならないという。

しかしながら、証券取引法一二五条三項所定の安定操作取引は、先に述べたとおり、当該有価証券につき形成された価格の下落を防ぎ又はこれを遅らせる目的で行う一連の売買取引をいうのであつて、ここにいう一連の売買取引の意義についても所論のように限定的に解すべきでないことは前記のとおりである。本件においては、前認定のように権利落妥当値二一五円を上回る二二一円の権利落価格が形成された後において、この価格の下落を防ぐ目的で本件一連の取引が行われていることは明らかであり、当時の客観的情況に照らしても権利落前の価格形成が前記変動操作によつて人為的に行われている以上、そのまま放置すれば権利落後の価格が下落するおそれは多分に存しており、従つて、本件の具体的な発注がいずれも二二〇円以上の価格による買い付けを目的としていることは、右の価格の維持を目的としたものということができるのである。所論は安定操作の要件を不当に狭く解しようとするもので独自の見解であり、とうてい採用できない。その他弁護人が本件株式の売買が安定操作違反にならないと主張するところをすべて検討するも、所論はいずれも採用できない。

第五自己株式の不正取得について。

一  弁護人は、被告人栗崎及び同間邉の本件株式の取得は、被告会社が問屋の取次行為として自社株を取得した場合と同様、はめ込み先として予定された安定株主から買い付けの委託を受けて、取次行為として自社株を買い付けたものであつて、委託者である安定株主の計算において買い付けがなされたものであるから、自己株式の取得にあたらないと主張する。

そこで検討すると、関係証拠によれば、被告会社では相当以前から主として株価の安定と株主の安定化を図るために従業員の親睦団体である如春会に株式買付資金を貸付ける形式をとりその資金枠の範囲内で自社株を買い付け、これを被告人栗崎及び同間邉、被告会社の支店長及び工場長らが中心となり、取引先の金融機関及び事業法人等に対し、はめ込みを図つていたものであるが、本件変動操作あるいは安定操作を行うについても、前記のとおり資金枠を増額したうえ、右の方法を利用したものであり、また買い付けにかかる株式の安定株主に対するはめ込みは、右変動操作あるいは安定操作の目的を完遂させるための一環として、新たな買付資金を回収するとともに市場から浮動株を吸いあげて株価の高騰・安定を図るために行われたものと認められる。そのため本件において被告会社が買い付けた自社株の中には買い付けの際にいまだはめ込み先が決らず、あるいははめ込み先から具体的な委託がないのに買い付けたものが相当数存在するばかりでなく、買い付け後にもはめ込み先が決らず、新たな買付資金を捻出するため、関係証券会社等を通して一般店頭客に売却したり、売却できずに被告会社においてそのまま保有していたものもかなり認められる。また予めはめ込み先から被告会社に対し買い付けについての具体的な委託があつた場合も、被告会社において右個々の委託に基づいて買い付けをなしこれをはめ込んだというものはほとんどなく、その大部分は変動操作あるいは安定操作の目的で前記被告会社の買付資金枠の範囲で買い付けたものを、新たな買付資金回収等のためにはめ込んだものである。しかもその際、買付代金が予め委託者の安定株主から被告会社に払い込まれるなどして安定株主の資金で支払われたものは全くないところ、本件株式の買付代金は例外なく被告会社振出にかかる小切手により決済されていること、買付代金よりも高値ではめ込むことができたことにより生じた差益金がすべて被告会社の雑収入として計上されていること等を併せ考えると、本件株式の取得は、被告会社従業員等の名義でなされているが、実質的に対価の支払は被告会社の負担においてなされ、かつその損益が被告会社に帰属していることが明らかであるから、これが被告会社の計算において行われたものであることは明らかである。弁護人は、商法五五四条は問屋が委託者の指値よりも廉価で販売し、あるいは高値で買い入れた場合でもその差額を問屋において負担すれば、その販売又は買い入れ行為は委託者に対する関係で有効に成立する旨規定しているところ、被告会社は本件において買付代金より高値ではめ込んだことによつて生じた差益を右規定の趣旨に則り会社の雑収入として計上したものというべきであつて、本件株式の買い付けは委託者である安定株主の買い付けの取次行為として行われたものであると主張するが、そもそも右商法五五四条は委託者と問屋との間に問屋契約が存在することを前提として、問屋が委託に基づく取次行為により生じた差損を負担する場合には委託者は問屋の取次行為を否認できない旨を規定したものであつて、本件のように被告会社に差益が生じた場合に関する規定でないことは明らかであり、しかも被告会社の本件株式の買い付けには安定株主と被告会社との間に、右問屋契約ないし所論指摘の問屋契約と同旨の契約がなされたものとは認められないから、所論は採用の限りでない。以上のとおりで、本件株式の取得は被告会社の計算においてなされたものであり、自己株式の取得にあたることは明らかである。

二  ところで弁護人は、本件株式の取得は自己株式の取得として禁止すべき弊害を何ら伴うものではないから、商法四八九条二号の不正に自己株式を取得した場合にあたらないと主張する。

しかしながら、被告会社の本件自社株の取得は、安定株主として被告会社の株式を取得しようとする者の具体的な委託に基づいて、その者のためにしたものではなく、さりとて買占め等の防止策として現実に会社の株式を確保することが会社の利益につながる等の理由から、遅滞なく安定株主にはめ込むことを予定してしたものでもなく、前述したとおり、変動操作あるいは安定操作の一環として敢行されたものであつて、取得行為自体違法なものであるばかりでなく、被告会社の資金で取得した本件株式の価格は人為的に高騰させたものであり、従つて実勢を反映したものでないことから、一般投資客等の利益を害するおそれが存したことはもとより、被告会社に対しても損害を被らせる危険性を多分に内包するものであること明らかであり(現に被告会社の株価は本件後にかなり下落している。)、被告会社において、本件取得にかかる株式を保有していた期間が比較的短期間であり、本件株式の取得代金より高値ではめ込み、売却できたためにかえつて利益が生じたものであること、本件では増資に伴う多額のプレミアムを取得していること等の事情を考慮しても、被告人栗崎及び同間邉らの本件被告会社の自社株の取得行為が商法四八九条二号所定の不正に自己株式を取得した場合に該当するものというべきである。所論は採用できない。

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社、被告人船越、同高田及び同寺島

判示第一の所為につき、包括して昭和五六年法律第六二号(証券取引法の一部を改正する法律)附則四条により同法による改正前の証券取引法一九七条二号、一二五条二項一号、二〇七条一項(被告人船越、同高田及び同寺島については更に刑法六〇条)、判示第二の所為につき、包括して右改正前の証券取引法一九七条二号、一二五条三項、同法施行令二〇条一項、同法二〇七条一項(被告人船越、同高田及び同寺島については更に刑法六〇条)

2  被告人栗崎及び同間邉

判示第一の所為につき、包括して刑法六〇条、昭和五六年法律第六二号(証券取引法の一部を改正する法律)附則四条により同法による改正前の証券取引法一九七条二号、一二五条二項一号、二〇七条一項、判示第二の所為につき、包括して刑法六〇条、右改正前の証券取引法一九七条二号、一二五条三項、同法施行令二〇条一項、同法二〇七条一項、判示第三の所為につき、包括して刑法六〇条、昭和五六年法律第七四号(商法等の一部を改正する法律)附則二七条により同法による改正前の商法四八九条二号

3  被告人栗田及び同後藤

判示第一の所為につき、包括して刑法六〇条、昭和五六年法律第六二号(証券取引法の一部を改正する法律)附則四条により同法による改正前の証券取引法一九七条二号、一二五条二項一号、二〇七条一項

二  科刑上一罪の処理(被告人栗崎及び同間邉)

刑法五四条一項前段、一〇条(判示第一の変動操作の罪、第二の安定操作違反の罪は、いずれも判示第三の自己株の不正取得の罪と一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから、一罪として重い自己株の不正取得の罪の刑で処断する。)

三  刑種の選択(被告会社以外の各被告人)

懲役刑選択

四  併合罪の処理

1  被告会社

刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人船越、同高田及び同寺島

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をする。)

五  刑の執行猶予(被告会社以外の各被告人)

刑法二五条一項

六  訴訟費用の負担

刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条

(量刑の事情)

本件は、東京証券取引所第一部上場の企業である被告会社の副社長及び経理部長が、会社の運営資金約三〇億円を調達するため、時価発行公募を含む一二億円の増資を実施するにあたり、公募価格を一株二〇〇円に設定することにより約一八億円のプレミアムを取得しようと企て、大手証券会社の支店幹部と相謀り、株価を人為的に高騰・維持させる目的で、被告会社の資金で自社株を買い付ける等の方法により、相場操縦を敢行したという事案である。右被告人らの各犯行は、被告会社及び関連会社から多額の買付資金を投入したうえ、昭和四七年七月二七日から同年一一月八日までの三ヵ月余の長期間にわたりほとんど連日のように被告会社の株式を売買することにより高値の形成・維持を狙つた大規模かつ組織的犯行であつて、その買付株式数も合計七一一万九〇〇〇株にも上る膨大なものである。そして、被告会社の株価は、同年四月ころ一株一一〇円程度であつたものが、同年六月、七月ころには前記のような被告会社による自社株買付の影響もあつて、一株一八〇円程度にまで高騰していたのに、更に本件相場操縦によつて権利落前には終値最高二五九円まで高騰させ、権利落後においても終始二二〇円ないし二三四円の高値を維持させて、被告人らの所期の目的を達成するに至つたものであつて、犯行の態様も極めて巧妙かつ計画的であるというべきである。また被告人らの地位、職責等にかんがみると、被告人らの本件一連の犯行は、自由にして公正であるべき証券市場に対する一般国民の信頼を裏切り、証券市場本来の機能を人為的操作により阻害したものであつて、証券業界に及ぼした悪影響も大きく、被告人らの刑事責任は重大であるといわなければならない。

被告人個別の犯情をみると、被告人栗崎は、本件当時被告会社の代表取締役副社長として本件増資に関し最高責任者の地位にあつたもので、会社の社会的責任を自覚すべき立場にありながら、本件各犯行の社会に及ぼす影響を省りみることなく、被告会社の返済金及び設備投資等のための資金を調達する必要から、部下の被告人間邉の提案を積極的に採用し、本件各犯行を総括的立場から終始指揮し、遂行していたものであつて、その責任は最も重いといわなければならない。また被告人間邉は、被告会社の取締役経理部長として、本件増資に関し被告人栗崎についで責任ある立場にあつたものであるが、本件を最初に立案・計画し、被告会社の関係証券会社に対する優越的地位を巧みに利用しながら証券会社関係相被告人らに働きかけて本件犯行に加担させると共に、同被告人らと遂一連絡をとりつつ本件各犯行を直接に指示しこれを推進したものであつて、その責任は被告人栗崎に次いで重いものと認められる。その余の被告人らは、いずれも大手証券会社の支店幹部の地位にあり、株式取引業務を遂行するうえで証券会社の遵守すべき公正な立場を貫かなければならない立場にありながら、自己の所属する証券会社の利益を追求するあまり、被告人間邉らの不当な要求に応じて本件相場操縦に加担し、市場における証券取引に対する一般の信頼を失墜させたものであり、その責任には軽視し得ないものがある。なお、被告人船越は、日興横浜支店の支店長として同支店の業務を統括掌理し部下職員を指揮監督すべき立場にありながら被告人高田の持ち込んだ判示第一、第二の犯行の計画を受け入れたうえ、本件相場操縦全般にわたつて関与したものであつて、その責任は他の証券会社関係被告人に比し重いものと認められる。また判示第三の自己株式不正取得の犯行は、本件相場操縦の手段的な犯行であり、長期間にわたり保有する意図まではなかつたとしても、特定の引取先のために、これに代つて取得したものでない以上、一時的にせよ資本の充実を害し、債権者その他の関係者の利益を損なつたものであり、被告人栗崎、同間邉の責任は、この点においても重いといわなければならない。

以上に加え、被告会社は、本件増資の翌年、株主に対し、本件増資による前記プレミアムの一部を還元しているが、本件売買取引に参加した一般投資家が被つたであろう損害の回復は事実上困難となり、また被告人らはいずれもいつたん捜査段階で本件犯行を認めておきながら、公判段階で種々弁疏を構え、一〇年余にわたり抗争するなど真摯な反省の念に欠けるところがあるといわざるを得ない。

しかしながら、他方、我が国においては、従前から本件のほかにも相場操縦ないしその疑いのある実例が少なからず存在することはつとに関係者の指摘するところであるが、監視機構の不備等からこれらに対する制裁や刑罰法規の発動が充分に行われておらず、被告人らも右のような事情のもとで本件犯行を安易に敢行したことが窺われるのであつて、本件において被告人らの刑事責任のみを厳しく追及することは酷に過ぎると考えられること、被告人らにはいずれも前科、前歴はなく、本件の公訴提起及び公判審理を通じて相応の社会的制裁を受けていると認められること、その他被告人各自の年齢、家庭環境等被告人らのため斟酌すべき事情も存するので、これらを総合勘案して各懲役刑の執行を猶予することとした。

(求刑 被告会社罰金三〇万円、被告人栗崎懲役二年、同間邉懲役一年六月、同船越懲役一年、同高田、同栗田、同寺島及び同後藤懲役一〇月)

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 小泉祐康 羽渕清司 園部秀穂)

別表第一の(一)

番号

買付年月日

買付会員名

買付名義人

単価(円)

買付株数

昭和四七、七、二七

日興証券(株)

鎌倉照光

一八〇ないし一九〇

三、〇〇〇

野村証券(株)

伊藤康夫

ほか一名

二〇〇、〇〇〇

〃〃三一

京浜倉庫(株)

一八八ないし一九五

三二二、〇〇〇

〃八、一

京浜倉庫(株)

ほか二名

一九八ないし二一五

五七八、〇〇〇

日興証券(株)

安藤亮士

五、〇〇〇

〃〃二

二〇七ないし二一〇

三二、〇〇〇

野村証券(株)

三国真一郎

二六〇、〇〇〇

〃〃三

山口茂

二一〇ないし二一三

七一、〇〇〇

日興証券(株)

前原孝則

三〇、〇〇〇

〃〃四

二一〇ないし二一三

一五七、〇〇〇

野村証券(株)

山口茂

一二九、〇〇〇

〃〃五

野村証券(株)

松永久雄

二一一ないし二一七

二〇〇、〇〇〇

日興証券(株)

安藤亮士

三〇、〇〇〇

〃〃八

野村証券(株)

松永久雄

二一五

三七、〇〇〇

〃〃九

二一五

一九、〇〇〇

一〇

〃〃一〇

松永久雄

ほか一名

二一三ないし二一五

一一六、〇〇〇

一一

〃〃一一

遠藤博

二一四

一一八、〇〇〇

一二

〃〃一二

二一四

一九、〇〇〇

一三

〃〃一四

遠藤博

ほか一名

二一〇ないし二一四

一四二、〇〇〇

一四

〃〃一五

森田実

二一三

六、〇〇〇

一五

〃〃一六

二〇九ないし二一四

一〇三、〇〇〇

日興証券(株)

安藤亮士

一三、〇〇〇

大和証券(株)

伊藤康夫

三〇、〇〇〇

一六

〃〃一七

二一三ないし二一四

三〇、〇〇〇

日興証券(株)

安藤亮士

一二八、〇〇〇

一七

〃〃一八

二一一ないし二一四

四八、〇〇〇

大和証券(株)

伊藤康夫

二〇、〇〇〇

一八

〃〃一九

日興証券(株)

前原孝則

二一二ないし二一四

五八、〇〇〇

大和証券(株)

伊藤康夫

三〇、〇〇〇

一九

〃〃二二

日興証券(株)

安藤亮士

二一六ないし二二五

一九、〇〇〇

山種証券(株)

横田修

二〇、〇〇〇

二〇

〃〃二三

大和証券(株)

伊藤康夫

二二二ないし二二五

四二、〇〇〇

日興証券(株)

横田修

二八、〇〇〇

二一

〃〃二四

二二一ないし二二二

一六、〇〇〇

遠山証券(株)

九、〇〇〇

山種証券(株)

九、〇〇〇

二二

〃〃二五

二二〇ないし二二二

九〇、〇〇〇

大和証券(株)

伊藤康夫

三五、〇〇〇

二三

〃〃二六

島田稔

二二〇ないし二二二

一五、〇〇〇

山種証券(株)

横田修

一〇、〇〇〇

二四

〃〃二八

野村証券(株)

川北登

ほか一名

二一九ないし二二四

一六〇、〇〇〇

二五

〃〃二九

大和証券(株)

飯塚良雄

ほか八名

二二四ないし二三〇

一一七、〇〇〇

野村証券(株)

武井昭長

四〇、〇〇〇

二六

〃〃三〇

大和証券(株)

加藤弘

ほか三名

二二八ないし二三〇

一二八、〇〇〇

野村証券(株)

弓削政美

一〇〇、〇〇〇

二七

〃〃三一

遠山証券(株)

前原孝則

二三四ないし二四五

四八、〇〇〇

大和証券(株)

加藤弘

ほか八名

一六二、〇〇〇

二八

〃九、一

虻川謙一郎

ほか三名

二四〇ないし二五〇

一〇八、〇〇〇

遠山証券(株)

横田修

二四三、〇〇〇

二九

〃〃二

高橋清

二四五ないし二四九

二七、〇〇〇

大和証券(株)

内田隆夫

三七、〇〇〇

三〇

〃〃四

高橋清

ほか一名

二四五

九一、〇〇〇

三一

〃〃五

河合鷹夫

二四五

六四、〇〇〇

三二

〃〃六

河合鷹夫

ほか一名

二四五ないし二四九

七八、〇〇〇

三三

〃〃七

日興証券(株)

荒川勇二

二四五ないし二四九

遠山証券(株)

高橋清

一七、〇〇〇

大和証券(株)

鎌倉照光

ほか二名

二三、〇〇〇

三四

〃〃八

遠山証券(株)

飯塚良雄

二四六

四九、〇〇〇

三五

〃〃九

河合淳治

二四五ないし二五〇

一四一、〇〇〇

日興証券(株)

荒川勇二

五、〇〇〇

三六

〃〃一一

二五〇

五八、〇〇〇

遠山証券(株)

飯塚良雄

二〇、〇〇〇

三七

〃〃一二

日興証券(株)

荒川勇二

二五〇

三七、〇〇〇

大和証券(株)

横田修

二四七

三〇、〇〇〇

三八

〃〃一三

毛利裕彦

二四二ないし二四五

三七、〇〇〇

日興証券(株)

荒川勇二

二七、〇〇〇

三九

〃〃一四

野村証券(株)

山田浩一

ほか七名

二四五ないし二五五

三六四、〇〇〇

大和証券(株)

鎌倉照光

二、〇〇〇

四〇

〃〃一六

野村証券(株)

大月孝司

ほか六名

二五三ないし二五六

二八二、〇〇〇

四一

〃〃一八

中野鎮夫

二五〇ないし二五三

一八、〇〇〇

大和証券(株)

毛利裕彦

四、〇〇〇

四二

〃〃一九

野村証券(株)

中野鎮夫

二五三

五、〇〇〇

四三

〃〃二〇

二五三・二五四

三一、〇〇〇

四四

〃〃二一

大和証券(株)

横田修

二五〇ないし二五五

一、〇〇〇

遠山証券(株)

水上鴻志

五、〇〇〇

日興証券(株)

大場正

二〇、〇〇〇

四五

〃〃二二

二五四ないし二六五

一〇七、〇〇〇

遠山証券(株)

水上鴻志

五二、〇〇〇

四六

〃〃二六

日興証券(株)

大場正

二五四ないし二五六

一、〇〇〇

遠山証券(株)

水上鴻志

一四三、〇〇〇

合計

六、一四九、〇〇〇

別表第一の(二)

番号

仮装売買年月日

買付会員名

買付名義人

売付会員名

売付名義人

仮装売買株数

単価(円)

昭和四七、九、二

遠山証券(株)

高橋清

日興証券(株)

横田修

ほか一名

七三、〇〇〇

二四八ないし二四九

〃〃九

河合淳治

毛利裕彦

三一、〇〇〇

二五〇

合計

一〇四、〇〇〇

別表第二

番号

買付年月日

買付会員名

買付名義人

単価(円)

買付株数

昭和四七、一〇、二

日興証券(株)

山口一美

二二一

九、〇〇〇

〃〃三

二二一

五、〇〇〇

〃〃四

二二一

六三、〇〇〇

〃〃五

二二〇

六四、〇〇〇

〃〃六

二二〇

二二、〇〇〇

〃〃七

二二〇

一六、〇〇〇

〃〃一一

大和証券(株)

恒吉利信

二二一

二二、〇〇〇

二二一

一、〇〇〇

〃〃一二

二二一

四、〇〇〇

二二一

七、〇〇〇

〃〃一三

二二一

九、〇〇〇

日興証券(株)

山口一美

二二〇

一三、〇〇〇

一〇

〃〃一四

二二〇

二〇、〇〇〇

一一

〃〃一七

二二〇

一五、〇〇〇

一二

〃〃一八

大和証券(株)

飯塚良雄

二二〇

四六、〇〇〇

一三

〃〃一九

二二〇

八、〇〇〇

二二〇

一二、〇〇〇

一四

〃〃二〇

二二〇

三三、〇〇〇

一五

〃〃二一

二二〇

一四、〇〇〇

一六

〃〃二三

第一証券(株)

田代喬

二二〇

一〇、〇〇〇

一七

〃〃二四

二二五

六、〇〇〇

二二二

一五、〇〇〇

二二一

七、〇〇〇

二二〇

三三、〇〇〇

二二四

二〇、〇〇〇

二二〇

八、〇〇〇

二二五

一一、〇〇〇

一八

〃〃二五

二二五

一一、〇〇〇

二二四

一、〇〇〇

二二〇

三、〇〇〇

一九

〃〃二六

二二〇

五、〇〇〇

二二五

一七、〇〇〇

二〇

〃〃二七

石井義雄

二二六

一五、〇〇〇

二一

〃〃二八

日本勧業角丸証券(株)

中島達雄

二二六

一三、〇〇〇

二二

〃〃三〇

二二六

八、〇〇〇

二二六

四、〇〇〇

二三

〃〃三一

富岡裕雄

二二六

一、〇〇〇

遠山証券(株)

田村弘明

二二六

三、〇〇〇

二三〇

五〇、〇〇〇

二二八

七、〇〇〇

二二九

二二、〇〇〇

二四

〃一一、一

日本勧業角丸証券(株)

富岡裕雄

二二六

五、〇〇〇

二二六

九、〇〇〇

二五

〃〃二

山吉証券(株)

水野馨

二三二

三、〇〇〇

二三一

一、〇〇〇

二三〇

一七、〇〇〇

二三〇

四、〇〇〇

東武証券(株)

浜田武彦

二三〇

三、〇〇〇

二三〇

五、〇〇〇

二二八

五、〇〇〇

二二九

一〇、〇〇〇

二六

〃〃四

二三〇

七、〇〇〇

山吉証券(株)

桜井道子

二三一

五、〇〇〇

二三一

四、〇〇〇

日本勧業角丸証券(株)

田村貢

二三〇

八、〇〇〇

二七

〃〃六

二三〇

一二、〇〇〇

山吉証券(株)

桜井道子

二三〇

一〇、〇〇〇

二二九

三、〇〇〇

二三〇

七、〇〇〇

二八

〃〃七

二三二

二、〇〇〇

二三〇

二八、〇〇〇

二三一

二〇、〇〇〇

二九

〃〃八

日本勧業角丸証券(株)

田村貢

二三〇

一七、〇〇〇

荒川哲夫

二三三

八、〇〇〇

第一証券(株)

石井義雄

二三二

一〇、〇〇〇

二三三

一〇、〇〇〇

合計

八六六、〇〇〇

別表第三

番号

買付年月日

買付会員名

買付名義人

買付株数

買付金額(円)

昭和四七、七、二七

日興証券(株)

鎌倉照光

三、〇〇〇

五六一、〇〇〇

野村証券(株)

伊藤康夫

ほか一名

二〇〇、〇〇〇

三七、四二三、〇〇〇

〃八、一

日興証券(株)

安藤亮士

五、〇〇〇

一、〇〇〇、〇〇〇

〃〃二

三二、〇〇〇

六、七一四、〇〇〇

〃〃三

前原孝則

三〇、〇〇〇

六、三〇〇、〇〇〇

〃〃四

一五七、〇〇〇

三三、三〇〇、〇〇〇

〃〃五

安藤亮士

三〇、〇〇〇

六、五一〇、〇〇〇

〃〃一六

一三、〇〇〇

二、七八一、〇〇〇

大和証券(株)

伊藤康夫

三〇、〇〇〇

六、四二〇、〇〇〇

〃〃一七

三〇、〇〇〇

六、四〇二、〇〇〇

日興証券(株)

安藤亮士

一二八、〇〇〇

二七、三五八、〇〇〇

〃〃一八

四八、〇〇〇

一〇、二一〇、〇〇〇

大和証券(株)

伊藤康夫

二〇、〇〇〇

四、二七六、〇〇〇

一〇

〃〃一九

日興証券(株)

前原孝則

五八、〇〇〇

一二、三八〇、〇〇〇

大和証券(株)

伊藤康夫

三〇、〇〇〇

六、四二〇、〇〇〇

一一

〃〃二二

日興証券(株)

安藤亮士

一九、〇〇〇

四、一三〇、〇〇〇

山種証券(株)

横田修

二〇、〇〇〇

四、四五〇、〇〇〇

一二

〃〃二三

大和証券(株)

伊藤康夫

四二、〇〇〇

九、三七四、〇〇〇

日興証券(株)

横田修

二八、〇〇〇

六、三〇〇、〇〇〇

一三

〃〃二四

一六、〇〇〇

三、五五二、〇〇〇

遠山証券(株)

九、〇〇〇

一、九九八、〇〇〇

山種証券(株)

九、〇〇〇

一、九九四、〇〇〇

一四

〃〃二五

九〇、〇〇〇

一九、八五〇、〇〇〇

大和証券(株)

伊藤康夫

三五、〇〇〇

七、七〇〇、〇〇〇

一五

〃〃二六

島田稔

一五、〇〇〇

三、三〇八、〇〇〇

山種証券(株)

横田修

一〇、〇〇〇

二、二〇〇、〇〇〇

一六

〃〃二九

大和証券(株)

飯塚良雄

ほか八名

一一七、〇〇〇

二六、五五九、〇〇〇

一七

〃〃三〇

加藤弘

ほか三名

一二八、〇〇〇

二九、三三六、〇〇〇

一八

〃〃三一

遠山証券(株)

前原孝則

四八、〇〇〇

一一、五八九、〇〇〇

大和証券(株)

加藤弘

ほか七名

一六二、〇〇〇

三八、二六四、〇〇〇

一九

〃九、一

虻川謙一郎

ほか三名

一〇八、〇〇〇

二六、三五二、〇〇〇

遠山証券(株)

横田修

二四三、〇〇〇

六〇、二四八、〇〇〇

二〇

〃〃二

高橋清

二七、〇〇〇

六、七一七、〇〇〇

大和証券(株)

内田隆夫

三七、〇〇〇

九、〇九八、〇〇〇

二一

〃〃四

高橋清

ほか一名

九一、〇〇〇

二二、二九五、〇〇〇

二二

〃〃五

河合鷹夫

六四、〇〇〇

一五、六八〇、〇〇〇

二三

〃〃六

河合鷹夫

ほか一名

七八、〇〇〇

一九、一四五、〇〇〇

二四

〃〃七

日興証券(株)

荒川勇二

四〇、〇〇〇

九、八〇〇、〇〇〇

遠山証券(株)

高橋清

一七、〇〇〇

四、一六五、〇〇〇

大和証券(株)

鎌倉照光

ほか二名

二三、〇〇〇

五、六九八、〇〇〇

二五

〃〃八

遠山証券(株)

飯塚良雄

四九、〇〇〇

一二、〇五四、〇〇〇

二六

〃〃九

河合淳治

一四一、〇〇〇

三五、〇九八、〇〇〇

日興証券(株)

荒川勇二

五、〇〇〇

一、二二五、〇〇〇

二七

〃〃一一

五八、〇〇〇

一四、五〇〇、〇〇〇

遠山証券(株)

飯塚良雄

二〇、〇〇〇

五、〇〇〇、〇〇〇

二八

〃〃一二

日興証券(株)

荒川勇二

三七、〇〇〇

九、二五〇、〇〇〇

大和証券(株)

横田修

三〇、〇〇〇

七、四一〇、〇〇〇

二九

〃〃一三

毛利裕彦

三七、〇〇〇

九、〇六五、〇〇〇

日興証券(株)

荒川勇二

二七、〇〇〇

六、五九五、〇〇〇

三〇

〃〃一四

野村証券(株)

山田浩一

ほか七名

三六四、〇〇〇

九一、八〇七、〇〇〇

大和証券(株)

鎌倉照光

二、〇〇〇

四九〇、〇〇〇

三一

〃〃一六

野村証券(株)

大月孝司

ほか六名

二八二、〇〇〇

七一、八八三、〇〇〇

三二

〃〃一八

中野鎮夫

一八、〇〇〇

四、五五四、〇〇〇

大和証券(株)

毛利裕彦

四、〇〇〇

一、〇〇〇、〇〇〇

三三

〃〃一九

野村証券(株)

中野鎮夫

五、〇〇〇

一、二六五、〇〇〇

三四

〃〃二〇

三一、〇〇〇

七、八七三、〇〇〇

三五

〃〃二一

大和証券(株)

横田修

一、〇〇〇

二五〇、〇〇〇

遠山証券(株)

水上鴻志

五、〇〇〇

一、二七五、〇〇〇

日興証券(株)

大場正

二〇、〇〇〇

五、〇八〇、〇〇〇

三六

〃〃二二

一〇七、〇〇〇

二七、六二七、〇〇〇

遠山証券(株)

水上鴻志

五二、〇〇〇

一三、五七八、〇〇〇

三七

〃〃二六

日興証券(株)

大場正

一、〇〇〇

二五三、〇〇〇

遠山証券(株)

水上鴻志

一四三、〇〇〇

三六、五六八、〇〇〇

三八

〃一〇、一一

大和証券(株)

恒吉利信

二三、〇〇〇

五、〇八三、〇〇〇

三九

〃〃一二

一一、〇〇〇

二、四三一、〇〇〇

四〇

〃〃一三

九、〇〇〇

一、九八九、〇〇〇

四一

〃〃一八

飯塚良雄

四六、〇〇〇

一〇、一二〇、〇〇〇

四二

〃〃一九

二〇、〇〇〇

四、四〇〇、〇〇〇

四三

〃〃二〇

三三、〇〇〇

七、二六〇、〇〇〇

四四

〃〃二一

一四、〇〇〇

三、〇八〇、〇〇〇

四五

〃〃二三

第一証券(株)

田代喬

一〇、〇〇〇

二、二〇〇、〇〇〇

四六

〃〃二四

一〇〇、〇〇〇

二二、二〇二、〇〇〇

四七

〃〃二五

一五、〇〇〇

三、三五九、〇〇〇

四八

〃〃二六

二二、〇〇〇

四、九二五、〇〇〇

四九

〃〃二七

石井義雄

一五、〇〇〇

三、三九〇、〇〇〇

五〇

〃〃二八

日本勧業角丸証券(株)

中島達雄

一三、〇〇〇

二、九三八、〇〇〇

五一

〃〃三〇

一二、〇〇〇

二、七一二、〇〇〇

五二

〃〃三一

富岡裕雄

一、〇〇〇

二二六、〇〇〇

遠山証券(株)

田村弘明

八二、〇〇〇

一八、八一二、〇〇〇

五三

〃一一、一

日本勧業角丸証券(株)

富岡裕雄

一四、〇〇〇

三、一六四、〇〇〇

五四

〃〃二

山吉証券(株)

水野馨

二五、〇〇〇

五、七五七、〇〇〇

東武証券(株)

浜田武彦

二三、〇〇〇

五、二七〇、〇〇〇

五五

〃〃四

七、〇〇〇

一、六一〇、〇〇〇

山吉証券(株)

桜井道子

九、〇〇〇

二、〇七九、〇〇〇

日本勧業角丸証券(株)

田村貢

八、〇〇〇

一、八四〇、〇〇〇

五六

〃〃六

一二、〇〇〇

二、七六〇、〇〇〇

山吉証券(株)

桜井道子

二〇、〇〇〇

四、五九七、〇〇〇

五七

〃〃七

五〇、〇〇〇

一一、五二四、〇〇〇

五八

〃〃八

日本勧業角丸証券(株)

田村貢

ほか一名

二五、〇〇〇

五、七七四、〇〇〇

第一証券(株)

石井義雄

二〇、〇〇〇

四、六五〇、〇〇〇

合計

四、三六八、〇〇〇

一、〇二五、七〇九、〇〇〇

別表 第4

協同飼料株式会社「株価及び出来高推移表」

昭和47年4・5月分

4月

5月

日付

始値

終値

高値

安値

出来高

(単位1000)

始値

終値

高値

安値

出来高

(単位1000)

1

110

110

110

109

24

2

110

110

112

110

88

3

110

112

112

108

51

4

108

108

112

108

19

110

111

111

109

110

5

108

105

108

105

57

6

106

110

110

105

312

111

110

112

110

28

7

113

110

113

110

50

8

110

112

112

110

17

110

108

110

108

70

9

109

108

109

108

74

10

112

110

113

110

30

108

110

110

108

88

11

110

110

112

110

47

110

110

110

108

56

12

110

112

112

108

85

111

110

111

109

79

13

110

110

112

107

61

110

110

110

109

63

14

110

110

110

110

64

111

115

115

110

137

15

110

110

111

109

71

115

120

120

112

278

16

119

120

123

119

446

17

110

105

110

105

81

18

106

110

110

105

43

121

120

122

120

215

19

108

109

110

105

47

119

115

119

115

46

20

106

110

110

105

104

118

115

119

115

18

21

110

110

110

110

37

117

115

117

115

40

22

108

110

110

108

33

115

119

120

115

177

23

24

109

110

111

108

82

120

119

121

119

208

25

109

110

110

109

122

120

118

121

118

122

26

110

110

111

109

44

118

119

120

118

48

27

110

110

110

109

41

119

118

119

118

18

28

110

110

110

108

43

29

118

119

119

117

47

30

118

117

120

117

83

31

117

119

119

117

39

昭和47年6・7月分

6月

7月

日付

始値

終値

高値

安値

出来高

(単位1000)

始値

終値

高値

安値

出来高

(単位1000)

1

118

122

122

116

257

149

150

150

146

335

2

119

119

121

118

112

3

119

118

119

118

27

149

150

152

147

489

4

150

147

150

140

146

5

119

120

121

118

191

149

143

149

142

203

6

122

125

128

122

421

143

147

147

143

46

7

126

132

136

126

705

144

145

146

144

65

8

134

132

135

130

295

149

145

149

145

65

9

130

130

131

128

180

10

129

130

130

128

105

146

146

148

146

22

11

145

150

152

143

331

12

132

130

134

129

207

154

150

154

150

320

13

133

135

135

130

250

150

163

164

147

757

14

136

144

144

135

467

167

179

181

163

1779

15

143

141

143

138

459

179

179

179

171

759

16

142

139

142

138

99

17

143

142

143

140

169

179

179

179

176

438

18

177

184

189

177

967

19

143

142

145

140

225

188

184

188

184

636

20

143

141

143

138

148

184

175

184

175

213

21

139

138

139

130

142

180

180

181

175

226

22

137

137

138

135

65

180

181

182

178

96

23

131

135

137

130

36

24

125

130

132

125

197

181

178

181

178

88

25

177

176

178

176

147

26

115

129

129

110

216

176

177

177

175

154

27

129

135

140

129

231

184

190

190

178

895

28

135

134

138

134

54

190

188

192

182

646

29

135

136

137

134

78

188

188

190

187

121

30

138

150

152

138

531

31

188

197

198

188

585

昭和47年8・9月分

8月

9月

日付

始値

終値

高値

安値

出来高

(単位1000)

始値

終値

高値

安値

出来高

(単位1000)

1

198

200

215

197

1109

240

251

251

235

565

2

210

208

213

207

581

246

245

250

245

176

3

207

213

213

207

593

247

245

250

235

158

4

211

210

213

210

396

5

211

217

217

211

433

240

245

247

240

72

6

245

246

249

245

87

7

219

215

220

215

106

245

245

249

245

504

8

215

215

217

215

101

249

246

249

246

373

9

215

215

216

215

104

245

250

250

245

178

10

215

214

215

211

154

250

251

251

250

87

11

214

215

215

214

158

12

214

215

215

214

32

250

247

251

247

79

13

242

245

245

242

74

14

214

214

215

210

159

246

255

255

245

387

15

214

214

214

210

55

16

213

214

215

209

175

254

255

257

253

291

17

214

214

214

213

162

18

212

214

214

211

72

250

253

255

250

225

19

212

214

214

212

96

253

253

254

253

90

20

253

254

254

253

102

21

210

215

215

210

227

253

255

255

250

131

22

215

225

225

215

217

254

259

265

254

464

23

224

222

225

222

129

24

222

223

225

221

313

255

257

257

255

146

25

218

220

224

218

152

255

256

256

253

445

26

220

219

222

219

34

27

221

221

221

220

16

28

219

225

225

219

218

221

222

222

221

2

29

224

229

230

224

521

223

221

223

221

23

30

228

229

232

227

384

221

221

221

221

10

31

230

245

245

230

426

昭和47年10・11月分

10月

11月

日付

始値

終値

高値

安値

出来高

(単位1000)

始値

終値

高値

安値

出来高

(単位1000)

1

226

226

226

226

15

2

221

222

222

221

15

228

231

232

228

71

3

221

221

221

221

7

4

221

221

221

221

71

230

231

231

230

25

5

220

220

220

220

65

6

220

220

220

220

26

230

230

231

229

36

7

220

220

220

220

16

228

231

232

228

54

8

230

234

234

230

91

9

221

221

221

221

9

234

234

234

234

27

10

234

234

235

234

28

11

221

221

222

221

26

234

234

234

234

4

12

221

221

221

221

11

13

221

220

221

220

22

234

230

234

230

13

14

220

220

220

220

20

230

233

234

230

19

15

230

230

230

230

11

16

220

220

220

220

3

228

228

228

228

14

17

220

220

220

220

20

228

228

228

228

5

18

220

220

220

220

49

19

220

220

220

220

45

20

220

220

220

220

43

228

228

230

228

10

21

220

220

220

220

14

228

229

229

228

15

22

228

228

228

228

2

23

220

220

220

220

10

24

220

225

225

220

102

228

228

228

228

7

25

220

225

225

220

15

0

26

220

225

225

220

34

27

226

226

226

224

535

222

222

222

222

33

28

225

230

230

225

17

225

225

225

222

25

29

225

225

225

225

22

30

229

226

229

226

15

225

225

225

225

28

31

229

230

230

226

88

昭和47年12月分

12月

日付

始値

終値

高値

安値

出来高

(単位1000)

1

220

220

220

220

3

2

0

3

4

222

222

222

222

22

5

222

222

222

222

7

6

222

210

225

210

25

7

209

220

220

209

17

8

218

218

218

218

5

9

0

10

11

215

215

215

215

8

12

214

223

223

214

39

13

0

14

0

15

213

213

213

213

15

16

213

213

213

213

6

17

18

213

215

218

213

18

19

213

220

220

213

31

20

218

218

218

218

7

21

0

22

208

208

213

208

29

23

0

24

25

208

208

208

208

16

26

210

210

210

210

5

27

208

210

211

208

14

28

206

206

206

206

14

29

30

31

別表第五の(一) 日興横浜支店関係(遠山証券(株)本店取扱分を含む)の売り付け状況(はめ込みを含む)一覧表

番号

売付年月日

(昭和年月日)

売付名義人

単価(円)

売付株数(株)

備考

1

四七、七、二七

小平眞一

一八七ないし一八九

二七〇、〇〇〇

山形共済連はめ込み二〇〇、〇〇〇株

2

〃〃二八

石渡亨

一八九ないし一九〇

六〇、〇〇〇

3

〃〃二九

ほか一名

一八八ないし一九〇

一九、〇〇〇

4

〃〃三一

小平眞一

ほか一名

一九〇ないし一九五

一一〇、〇〇〇

5

〃八、一

石渡亨

二〇〇

一、〇〇〇

6

〃〃二

小平眞一

二一〇

三、〇〇〇

7

〃〃七

安藤亮士

二一九

二七、〇〇〇

8

〃〃二四

前原孝則

ほか一名

二二二

二二〇、〇〇〇

山形共済連はめ込み二〇〇、〇〇〇株

9

〃〃二九

安藤亮士

二二八ないし二二九

一〇〇、〇〇〇

10

〃〃三一

二三三

一〇〇、〇〇〇

店頭客(山田多二ほか一名)はめ込み一〇〇、〇〇〇株

11

〃九、一

島田稔

二四一ないし二四二

一〇〇、〇〇〇

店頭客はめ込み一〇〇、〇〇〇株うち山口岩夫ほか一三名はめ込み八八、〇〇〇株

12

〃〃二

横田修

ほか一名

二四八ないし二四九

七三、〇〇〇

仮装売買対当分七三、〇〇〇株

13

〃〃八

高橋清

ほか一名

二四六

二六八、〇〇〇

富士火災はめ込み二六〇、〇〇〇株遠山証券(株)注文分八、〇〇〇株

14

〃〃九

毛利裕彦

二五〇

三一、〇〇〇

仮装売買対当分三一、〇〇〇株

15

〃〃一四

遠藤博

二五三ないし二五四

六〇、〇〇〇

16

〃〃一六

ほか一名

二五四ないし二五五

六〇、〇〇〇

17

〃〃一八

荒川勇二

ほか一名

二五五

一六〇、〇〇〇

18

〃〃二五

ほか一名

二五七

八〇、〇〇〇

三興製作所はめ込み八〇、〇〇〇株

19

〃〃二六

加藤弘

二五四

一〇〇、〇〇〇

山形共済連はめ込み一〇〇、〇〇〇株

計 一、八四二、〇〇〇株

但し仮装売買対当分一〇四、〇〇〇株を含む

別表第五の(二) 大和横浜支店関係の売り付け状況(はめ込みを含む)一覧表

番号

売付年月日

(昭和年月日)

売付名義人

単価(円)

売付株数(株)

備考

1

四七、八、二九

伊藤康夫

二二四

二〇〇、〇〇〇

店頭客はめ込み二〇〇、〇〇〇株(うち井上和江ほか二一名六〇、〇〇〇株)

2

〃〃三一

二三七

三五、〇〇〇

3

〃九、七

荒川勇二

ほか三名

二四五

四〇〇、〇〇〇

店頭客はめ込み四〇〇、〇〇〇株(うち浅井昭三ほか四二名一六〇、〇〇〇株)

4

〃〃二二

寺本暢夫

ほか一名

二五四

二一五、〇〇〇

野沢屋はめ込み二一五、〇〇〇株

計 八五〇、〇〇〇株

別表第五の(三) 野村原町田支店関係の売り付け状況(はめ込みを含む)一覧表

番号

売付年月日

(昭和年月日)

売付名義人

単価(円)

売付株数(株)

備考

1

四七、七、二八

山下三郎

一八九

一七七、〇〇〇

四七、七、二七以前の買い付け分店頭客はめ込み

2

〃〃三一

一八九

一四三、〇〇〇

四七、七、二七以前の買い付け分

3

〃八、一

伊藤康夫

一九九

一〇〇、〇〇〇

4

〃〃三

大場正

二〇七ないし二一〇

一〇〇、〇〇〇

計 五二〇、〇〇〇株

別表第六 被告会社による自社株のはめ込み状況一覧表

番号

約定年月日

(昭和年月日)

はめ込み先

はめ込み株数(株)

単価(円)

金額(円)

1

四七、六、五

山口銀行

三〇〇、〇〇〇

一一八

三五、四〇〇、〇〇〇

2

〃〃〃

七七銀行

五〇、〇〇〇

一一八

五、九〇〇、〇〇〇

3

〃〃一〇

静岡銀行

二〇〇、〇〇〇

一二八

二五、六〇〇、〇〇〇

4

〃〃一三

一六銀行

一〇〇、〇〇〇

一三〇

一三、〇〇〇、〇〇〇

5

〃〃二七

東邦銀行

一〇〇、〇〇〇

一三二

一三、二〇〇、〇〇〇

6

〃七、二八

三和銀行

一〇〇、〇〇〇

一七六

一七、六〇〇、〇〇〇

7

〃〃〃

第一勧業銀行

二〇〇、〇〇〇

一七六

三五、二〇〇、〇〇〇

8

〃八、三

西日本相互銀行

二〇〇、〇〇〇

二一三

四二、六〇〇、〇〇〇

9

〃九、八

住友信託銀行

一〇〇、〇〇〇

二三〇

二三、〇〇〇、〇〇〇

10

〃〃九

大和銀行

二〇〇、〇〇〇

二四五

四九、〇〇〇、〇〇〇

11

〃〃二二

中国銀行

一〇〇、〇〇〇

二四五

二四、五〇〇、〇〇〇

12

〃〃二二

(株)ユアサ

七五、〇〇〇

二五〇

一八、七五〇、〇〇〇

13

〃〃二五

三井物産(株)

六四〇、〇〇〇

二五四

一六二、五六〇、〇〇〇

14

〃〃二七

伊豫銀行

一〇〇、〇〇〇

二四五

二四、五〇〇、〇〇〇

15

〃〃〃

東海銀行

一〇〇、〇〇〇

二五〇

二五、〇〇〇、〇〇〇

16

〃〃〃

日商岩井(株)

三〇〇、〇〇〇

二五六

七六、八〇〇、〇〇〇

計二、八六五、〇〇〇

五九二、六一〇、〇〇〇

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